各社毎の詳しい内容については、次の
4で述べる。その前に、ここでは、各社の状況の概要を、次ページの図表の通りにまとめているので、これに基づいて報告する。
この図表から見てとれるように、欧州の大手保険グループの間でも、SCRの算出方法等が統一されているわけではない。そのため、表面上のSCR比率の水準だけを比較することは必ずしも適切とはいえない。ただし、各社のSCR比率の算出方法等の考え方を比較してみることは意味があるものと考えられる。
(1)SCR比率
SCR比率の目標範囲については、200%をベースに設定している会社が多い。Aegonの目標範囲が他社に比較して低いのは、オランダにおいて各種の長期保証措置の適用を行っていないこと等が1つの要因となっている。
(2-1)SCR等の算出方法(内部モデルの適用状況)
Aegonが部分内部モデルを使用しているが、他の4社は完全内部モデルを使用している。
内部モデルの適用対象については、元受会社の4社は、母国に加えて、欧州の主要事業国やアジア等、実質的に米国を除く主要事業国を含めている。米国については各社とも同等性評価に基づいている。内部モデル適用比率の違いは、米国子会社のウェイトの差によるものである。ただし、米国子会社の資本要件のSCRへの反映方法である「転換率」
1については、150%~300%と幅がある形になっている。
再保険会社であるMunich Reは、グループ・ソルベンシーの算出に、控除・集計手法(Deduction and Aggregation method)ではなく、連結ベース手法(Accounting Consolidation-based method)を用いている。 なお、これに関係して、EIOPA(欧州保険年金監督機構)は1月27日に「グループ・ソルベンシーの算出における(「連結ベース手法」と「控除・集計手法」の2つの)組み合わせ手法の適用に関する意見」
2という形で、各国の監督当局に対するガイダンスを公表している。
(2-2) SCR等の算出方法(長期保証措置の適用状況)
ソルベンシーIからソルベンシーIIへの移行における割引率や技術的準備金についての16年間にわたる経過措置、MA(マッチング調整)及びVA(ボラティリティ調整)といった長期保証措置
3の適用については、各国の保険市場の特徴(販売商品や資産運用市場等)に大きく依存している。ここでは、母国市場での適用状況だけを示しているため、この図表に記載されている内容だけでは、公平な評価はできない面もある。
ただし、この図表には記載されていないが、例えば、英国における事業についてみた場合でも、Prudentialは技術的準備金に関する経過措置とMAを適用しているが、AXAの英国子会社はVAのみを、Aegonの子会社は経過措置、MA、VAの全てを適用している、というように、各社の置かれている状況等によって、長期保証措置の適用方針は異なっている。
(3)SCR比率の感応度
SCR比率の感応度については、各社とも低下させる方向で対応してきているが、相対的には、Aegonの感応度が低く、事業構造が元受会社とは異なることにもよるが、Munich Re の感応度が高くなっている。