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最近の人民元と今後の展開(2015年12月号)
2015年12月02日
(三尾 幸吉郎)
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11月の人民元相場(対米国ドル)は基準値・市場実勢ともにじりじりと下落する展開となった。なお、10月末には基準値と市場実勢が0.5%も乖離し、"基準値と市場実勢の大幅乖離が復活するのでは?"との懸念が浮上していたが、その乖離は一時的なものに終わった。
12月の人民元(市場実勢)は1米国ドル=6.40元を中心としたボックス圏での推移を予想している(取引レンジは1米国ドル=6.35~6.45元)。12月前半は米国で利上げが予想されるため下値を試す展開となり易い。その後は一旦、材料出尽くしから上値を試す可能性もあるが、人民元が上値を試すには力不足で、買戻しがあっても小幅かつ一時的だろう。
[ 11月の動き ]
11月の人民元相場(対米国ドル)は基準値・市場実勢ともにじりじりと下落する展開となった。基準値の当月高値は第1営業日(2日)に付けた1米国ドル=6.3154元、当月安値は最終営業日(30日)に付けた同6.3962元となり、11月は前月末比で0.7%の元安・ドル高となった。一方、市場実勢(スポット・オファー、中国外貨取引センター)は、4日に付けた1米国ドル=6.3361元が当月高値、最終営業日(30日)に付けた同6.3982元が当月安値となり、11月は前月末比で1.3%の元安・ドル高となった(図表-1)。
なお、10月末には基準値と市場実勢が0.5%も乖離し、市場では"基準値と市場実勢の大幅乖離が復活するのでは?"との懸念が浮上していたが、その乖離は一時的なものに終わり、11月初旬には解消することとなった(図表-2)。
一方、世界の通貨の動きを見ると、主要通貨では欧州ユーロが米国ドルに対して前月末比4.4%下落、日本円も同2.1%下落と、主要通貨に対して米国ドルが買われた。また、新興国通貨に対しても米国ドルは概ね堅調で、ロシア(ルーブル)が同3.3%下落、インド(ルピー)が同2.0%下落、ブラジル(レアル)が同1.9%下落、韓国(ウォン)も同1.6%下落となった(図表-3)。新興国通貨が概ね軟調に推移する中で中国の通貨(人民元)も下落した。8月に中国人民銀行が人民元の基準値の形成メカニズムを改善して以降、新興国通貨の動きとの連動性が強まっている(図表-4)。
[ 今後の展開 ]
さて、12月の人民元(市場実勢)は1米国ドル=6.40元を中心としたボックス圏での推移を予想している(取引レンジは1米国ドル=6.35~6.45元)。
12月前半は下値(1米国ドル=6.45元)を試す展開となり易いだろう。米国では12月中旬に連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。そこで、利上げを決定するとの予想が有力となっており、米国ドルへの資金回帰が起きて新興国通貨は弱含むと見られるからである。その後、12月後半になると人民元は上値(1米国ドル=6.35元)を試す展開になる可能性がある。市場では米利上げを既にだいぶ織り込んでいると見られることから、事前の予想通りに利上げが決定されれば、材料出尽くしからポジション調整の利食い売りが優勢となって、人民元を含む新興国通貨に買戻しの動きがでてくるかもしれないからである。但し、その買戻しの動きは小幅かつ一時的に終わるだろう。というのは、中国で12月1日に発表されたPMIは製造業・非製造業ともに冴えない内容で、人民元が上値を試すには力不足だと考えられるからである(図表-5)。
なお、来年10月から人民元がSDRの構成通貨に加わることになったが、当面の相場への影響は小さいと見ている。
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