さくらレポート(2015年10月)~景気は改善基調を維持も、景況感の先行きは全地域で悪化

2015年10月20日

(岡 圭佑)

■見出し

・全9地域で景気判断を据え置き
・業況判断は悪化が2地域に留まるも、先行きは全9地域で悪化
・製造業の業況判断は4地域で改善、先行きは全9地域で悪化
・非製造業の業況判断は5地域で改善、先行きは全9地域で悪化

■要旨

10月19日に日本銀行が公表した「地域経済報告(さくらレポート)」によると、全9地域で景気の改善度合いに関する判断を据え置いた。輸出や生産面に新興国経済の減速に伴う影響が顕在化しているとの懸念を示しながらも、国内需要は設備投資が緩やかな増加基調にあり、雇用・所得環境の着実な改善を背景に個人消費が底堅く推移していることを理由に、景気は回復しているとの表現を維持した。

製造業の業況判断DIは、全9地域中4地域(東北、近畿、四国、九州・沖縄)で前回調査から改善する一方で、4地域(北海道、北陸、関東甲信越、東海)で悪化した(横ばいは中国)。10月1日に公表された短観では、国内需要の低迷に加え、世界同時株安の発端となった中国経済の減速の影響などが企業マインドの下押し要因となったことが示された。地域経済報告においても、自動車販売の回復が遅れている輸送用機械や在庫調整圧力の高い鉄鋼などで景況感の悪化が示されたほか、中国依存度が高い電気機械が悪化するなど、内需低迷や中国を中心とした海外の景気減速を色濃く反映する結果となった。円安を主因とする値上げによって収益改善が奏功していた食料品は、改善基調に一服感がみられる一方で、住宅着工の持ち直しを背景に木材・木製品は改善に転じている。

非製造業の業況判断DIは、全9地域中5地域(東北、北陸、関東甲信越、東海、四国)で改善し、2地域(北海道、九州・沖縄)で悪化した(横ばいは近畿、中国)。非製造業は製造業に比べ外需依存度が低いため、中国など海外の景気減速によるマインド悪化は避けられたようだ。業種別では、訪日外国人旅行客による旺盛なインバウンド消費が小売や宿泊・飲食サービスを中心に景況感の改善に寄与したとみられる。

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