経済研究部 経済調査部長
斎藤 太郎(さいとう たろう)
研究領域:経済
研究・専門分野
日本経済、雇用
関連カテゴリ
■見出し
・8月の生産は予想外のマイナス
・鉱工業生産は下降局面に
■要旨
経済産業省が9月30日に公表した鉱工業指数によると、15年8月の鉱工業生産指数は前月比▲0.5%と2ヵ月連続で低下し、先月時点の予測指数の伸び(前月比2.8%)、事前の市場予想(QUICK集計:前月比1.0%、当社予想も同1.0%)をともに大きく下回る結果となった。出荷指数は前月比▲0.5%と2ヵ月連続の低下、在庫指数は前月比0.4%と2ヵ月ぶりに上昇した。
8月の生産を業種別に見ると、新興国経済減速の影響からはん用・生産用・業務用機械が前月比▲3.2%と大きく落ち込んだほか、国内販売が低調に推移している輸送機械が前月比▲0.7%の減少となるなど、速報段階で公表される15業種中10業種が前月比で低下、5業種が上昇した。
製造工業生産予測指数は、15年9月が前月比0.1%、10月が同4.4%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(8月)、予測修正率(9月)はそれぞれ▲4.2%、▲2.4%となり、先月時点の生産計画が大幅に下方修正され、8月については予測調査の対象となっている11業種全てが下方修正された。9月の予測指数はかろうじて前月比でプラスとなっているが、生産計画が下方修正されていることを踏まえれば、実際の生産はマイナスとなる可能性が高く、10月の増産についても不確実性が高い。
15年8月の生産指数を9月の予測指数で先延ばしすると、15年7-9月期は前期比▲1.1%となり、4-6月期の同▲1.4%に続き2四半期連続の減産となることが確実となった。また、7月に前月比▲0.8%と比較的大きめの低下となった在庫指数は前月比0.4%と再び上昇した。個人消費を中心とした国内需要の低迷、中国、新興国などの海外経済の減速を背景とした輸出の弱含みから在庫の積み上がりに歯止めがかからない。
鉱工業生産は消費税率引き上げの影響が和らぐ中、14年夏場以降持ち直していたが、内外需の弱さを背景とした在庫調整の遅れから15年初め頃をピークに下降局面に入ったと判断される。
経済研究部 経済調査部長
研究領域:経済
研究・専門分野
日本経済、雇用
・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員