資金循環統計(15年4-6月期)~個人金融資産は前年比72兆円増の1717兆円、過去最高を更新

2015年09月17日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■見出し

・個人金融資産(15年6月末): 前期末比では17兆円増
・資金流出入の詳細: 株式からの資金流出が進む
・その他注目点: 家計の資金余剰が減少、日銀の国債保有高が預金取扱機関を逆転

■要旨

2015年6月末の個人金融資産残高は、前年比72兆円(4.4%)増の1717兆円となった 。残高は4四半期連続で過去最高を更新している。年間で資金の流入超過が27兆円あったのに加え、円安・株高基調を受けて時価 が45兆円増加したことが残高の大幅な押し上げに働いた。四半期ベースでは、前期末(3月末)比で17兆円の増加となった。例年4-6月期は一般的な賞与支給月を含むことからフローで流入超過となる傾向があり、今回も9兆円の流入超過となった。さらに、4-6月期は円安・株高基調となったため、時価が8兆円増加し、残高の増加に寄与した。

4-6月期の個人金融資産への資金流出入について詳細を見ると、例年同様、現預金への資金流入が顕著になっている。リスク性資産については、投資信託への資金流入が3.4兆円に達し、1-3月に続いて大規模な資金流入となった。一方、株価上昇局面であったことで利益確定売りが進み、株式・出資金は3.6兆円の資金流出となった。これは、証券優遇税率終了を控えて売りが膨らんだ2013年10-12月に次ぐ大規模な流出となる。株と投資信託に外貨預金や対外証券投資などを加えたリスク性資産の残高は、株価の上昇もあって299兆円、その個人金融資産に占める割合は17.4%と、それぞれ3月末から拡大している。

国庫短期証券を含む国債の6月末残高は1037兆円と、過去最高であった3月末から1兆円減少した。前年比では27兆円の増加となる。国債の保有状況を見ると、従来同様、預金取扱機関(銀行など)の保有高が減少する一方で、異次元緩和で国債の大量買入れを継続している日銀の保有高が大きく増加し、ついに日銀の保有高が預金取扱機関を上回った。全体に占める日銀の保有シェアも28.5%にまで上昇している。日銀は今後も異次元緩和を継続するため、日銀の存在感(シェア)は高まっていく。

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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