ギリシャのユーロ離脱シナリオを用意して開催される12日EU首脳会議

2015年07月09日

(伊藤 さゆり) 欧州経済

ギリシャとユーロ圏の双方が望んでいなかったデフォルトと事実上のユーロ離脱という最悪のシナリオがいよいよ現実味を帯びてきた。

7日のユーロサミットでは、ギリシャ政府に新たな支援の見返りに実行する改革案を9日までに提出するよう求め、12日にEU首脳会議を召集することを決めた。前日11日のユーログループの結果が芳しくなければ、12日の首脳会議は、ギリシャに改革案での合意か、ユーロ離脱かの選択を迫ることも考えられる。

チプラス首相が、ユーロ離脱を回避すべく、首脳会議で支援への暫定合意に漕ぎ着けようとすれば、「有利な条件」を期待してNOに票を投じた有権者を裏切ることになる。

首脳会議で「離脱」、「除名」を決議することはないが、支援要請を却下すれば、ECBのELA打ち切りにつながる。ギリシャ政府は、政府借用証書(IOU)などを発行するなどの対処を迫られ、事実上のユーロ離脱の様相を呈することになろう。その後の社会の混乱は避けられず、やはり有権者は裏切られたと感じるのではないか。

その後のギリシャには、法定通貨のユーロからドラクマへの切り替えという選択と、信頼に足る改革案を提示し直し、ユーロ参加国としての権利を回復する選択が残されるかもしれない。

経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり(いとう さゆり)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴

・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職

・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
           「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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