経済研究部 経済調査部長
斎藤 太郎(さいとう たろう)
研究領域:経済
研究・専門分野
日本経済、雇用
関連カテゴリ
■見出し
・実質消費支出は14ヵ月ぶりの増加
・個人消費の基調は弱い
■要旨
総務省が6月26日に公表した家計調査によると、15年5月の実質消費支出は前年比4.8%と14ヵ月ぶりの増加となった。ただし、14年5月が駆け込み需要の反動などから前年比▲8.0%の大幅減少となっていたため、今月はその裏が出る形で前年比の伸びは高めになりやすいことを考えるとそれほど強い結果とはいえない。季節調整済・前月比は2.4%の増加となったが、4月の大幅な落ち込み(前月比▲5.5%)の半分も取り戻していない。
実質消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は前月比1.5%と2ヵ月ぶりに上昇したが、4月の落ち込み(前月比▲3.7%)を考えると戻りは弱い。4、5月の指数平均は1-3月期を▲1.0%下回っており、均してみれば一進一退の状況を脱していない。
家計調査以外の5月の個人消費関連指標を確認すると、商業動態統計の公表は6月29日だが、すでに発表されている百貨店売上高は訪日外国人向けの売上高が急増していることもあり、前年比では15年4月、5月と2ヵ月連続したが、季節調整値(当研究所による試算値)では横這い圏の動きにとどまっている。
また、自動車販売台数は軽自動車が15年4月からの増税によって急減していることが響き、駆け込み需要の反動で急速に落ち込んだ14年夏頃の水準をさらに下回っている。個人消費の基調は弱い。
原油価格下落に伴う物価上昇率の低下によって、消費低迷の主因となってきた実質所得の押し下げ圧力は和らいでいるが、現時点では名目賃金の伸びがそれほど高くないため、実質賃金の持ち直しは限定的にとどまっている。15年4月の実質賃金は速報段階では前年比0.1%と2年ぶりのプラスとなったが、確報値で前年比▲0.1%へと下方修正された。
先行きについては、物価上昇率がマイナスとなる中、昨年を上回る賃上げが実現した春闘の結果が5月以降に反映されること、ボーナスの増加が寄与することから、夏場にかけて実質賃金が上昇に転じることはほぼ確実とみられる。ただし、エネルギー価格の下落幅縮小に伴い消費者物価が上昇に転じることが見込まれる秋以降は、実質賃金の伸びが再び低下する可能性がある。
現時点では、個人消費は実質所得の改善を主因として持ち直しに向かうと予想しているが、名目賃金の伸び悩みや物価の上昇ペース加速によって回復が遅れるリスクがあるだろう。
経済研究部 経済調査部長
研究領域:経済
研究・専門分野
日本経済、雇用
・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員