経済研究部 准主任研究員
斉藤 誠(さいとう まこと)
研究領域:経済
研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済
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1.1-3月期は前年同期比+3.0%
タイの2015年1-3月期の実質GDP成長率1 は前年同期比(原系列)+3.0%の増加と、前期の同+2.1%から回復したが、Bloomberg調査の市場予想(同+3.4%)を下回った。また、前期比(季節調整値)は+0.3%と、前期(同+1.1%)から鈍化した。
2.輸出不振で回復ペースが鈍る恐れも
1-3月期の成長率は3%と市場予想の3.4%を下回り、景気回復の遅れが一層認識される結果であった。1-3月期の成長率を押し上げた公共投資と観光業は、投資予算の執行に伴う公共事業の実施や戒厳令の解除による訪タイ外客数の増加などが見込まれ、先行きも回復局面が続くとみられるが、財の輸出の不振と民間消費の伸び悩みで回復ペースが鈍る恐れがある。
財の輸出の不振は、海外経済の減速やEUの一般特恵関税制度の適用除外、さらにはバーツ高による輸出競争力の低下が背景にある。こうした輸出環境の悪化を受けて、商務省は4月に今年の輸出予想を前年比4%から1.2%に下方修正している。また、民間消費は、1-3月期に燃料価格の下落に伴う家計の購買力の向上を受けて回復したが、農産物価格の低迷は就業者全体の約4割を占める農業の所得悪化をもたらすほか、高水準の家計債務による返済負担のために個人消費の大幅な改善は見込みにくい。
景気回復の一層の遅れを懸念する中央銀行は、3月と4月に政策金利を0.25%ずつ引き下げた。政策金利の引下げは、家計債務の更なる増大というリスクも孕みつつも、個人消費や企業の設備投資意欲の喚起は期待できる。しかし、経常黒字の継続や低インフレ率に伴う実質政策金利のプラス水準(+2%)などのためにバーツ安は限定的となり、輸出拡大はあまり期待が持てない。輸出主導経済のタイにとって、輸出の低迷は企業の設備投資や雇用・所得環境の悪化を通じて民間投資と民間消費の足枷となるだけに、回復スピードが更に鈍る懸念は燻っている。
経済研究部 准主任研究員
研究領域:経済
研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済
【職歴】
2008年 日本生命保険相互会社入社
2012年 ニッセイ基礎研究所へ
2014年 アジア新興国の経済調査を担当
2018年8月より現職