世代間格差と合成の誤謬

2015年05月08日

経済学では「合成の誤謬」という考えがある。例えば、全ての家計が貯蓄を増やそうとして、消費を減らす。この場合国全体では総需要が縮小し、生産活動ひいては家計の所得も減ってしまう。つまり、1人1人にとって正しいとされる行動を全ての人がとることで、その意図と異なる悪い結果を招くことをさす。

少子化による世代間格差にも同じことが当てはまる。「年金がもらえない」など社会保障の受益と負担について、世代間の格差が強調されすぎると、これから生まれてくる世代はかわいそうだということになる。その結果、人々が子供を作るのをためらうと少子化はさらに進み、現実に生まれた子供1人当たりの負担がもっと大きくなる。

確かに社会保障における負担のつけまわしはもちろん、財政赤字など後世代への負の遺産をこれ以上大きくするべきではない。しかし、1人あたりの実質GDPや金融資産は今でも徐々に伸びている。加えて、携帯電話など情報通信技術の発達や鉄道・道路などのインフラの整備によって、20年、30年前に比べ若者の生活は格段に便利になっている。プラスとマイナスをバランスよく評価していかないと、合成の誤謬が少子化に拍車をかけることにもなりかねない。

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