金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト
井出 真吾(いで しんご)
研究領域:医療・介護・ヘルスケア
研究・専門分野
株式市場・株式投資・マクロ経済・資産形成
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1――昨年の予想を振り返る
2015年の日本株市場を予想する前に、昨年を振り返ろう。14年はアメリカを襲った歴史的な寒波やウクライナ情勢の緊迫化などで大きく値下がりする場面もあったが、その後持ち直し、日経平均は7.1%値上がりした[図表1]。特に、10月31日に日銀が発表した追加緩和を起爆剤に、年末にかけて大幅上昇したことは記憶に新しい。
ところで、筆者は14年の年初に書いたレポート「年初の株価下落をどうみるか、そして1年後の株価は?」(14年1月8日付け)で、14年末の日経平均を17,500円と予想した。実際は17,450円だったので、誤差50円という幸運かつ出来過ぎの結果だった。
予想の考え方はこうだ。将来の株価を予想する重要なカギは2つだと筆者は考えている。1つは企業業績の先行き、もう1つは市場の心理状態(強気or弱気)だ。
企業業績は株価を決定する最も重要な要素で、これに市場の心理状態が加わって上下にかい離する。極めてシンプルでオーソドックスな考え方だろう。言うまでもなく為替、国内外の景気、金融政策なども株価に影響するが、突き詰めれば企業業績と市場心理に集約される。
この考え方に沿って14年初に予想した当時のポイントは次のとおりだ。
(1)企業業績:14年度は約1割の増益を見込む声が多い。その場合、日経平均の適正ゾーンは15,400~17,600円となる。
(2)市場心理:企業業績が1割改善するなら、アベノミクスや(14年4月の)消費税増税が失敗だったという事態には陥っていないだろう。このシナリオの場合、14年末時点の株価は適正ゾーンの上限付近(17,500円程度)が想定される。
実際はどうだったか図示したのが[図表2]だ。雲のような部分が日経平均の適正ゾーンで、昨年末時点では15,600~17,800円と上記(1)の予想に近い。つまり、1年前に市場が予想していた増益率はほぼ妥当だった。
次に日経平均([図表2]の赤い線)は昨年末時点で適正ゾーンの上限付近にあり、上記(2)の予想どおりだった。
2――15年末は2万円台回復が妥当
今年はどうなるか。まず企業業績の先行きだが、1ドル=120円の円安も、1バレル=50ドルの原油安も昨年の秋以降の出来事だ。企業側がある程度はヘッジしていることを想定すると、15年3月期業績へのメリットは限られる。
一方、足下の円安や原油安がこの先も続けば15年度業績にはフルに寄与する。また、最近の経済統計をみると国内景気の腰折れ懸念はやや遠のいたようだ。これらの結果、15年度の企業業績は15%程度の増益が期待できよう。この場合、日経平均の適正ゾーンは18,800円~21,500円となる。
次に市場心理だが、昨年と最も違うのは市場心理の見通しが難しい点だ。円安や原油安には限界があること、そしてアベノミクス第三の矢である成長戦略の具現化がこれまで乏しく、16年度以降の業績改善が期待しづらい。端的に言えば13~15年度は円安が業績改善をもたらすが16年度以降の伸びしろは限定的と言わざるを得ない。となると市場心理は決して明るくない。
また、今年中には米国が利上げに踏み切り、一時的に市場が混乱する可能性が高い。更に、原油価格や欧州・ロシア経済の不安が指摘される一方で、国内の物価上昇率を押し下げる結果、日銀の追加緩和に繋がるといった見方もできるように、好悪材料が入り混じっている。
以上より、現時点では15年末時点の日経平均を適正ゾーン中央の20,000円と予想する。これはPER(株価の割安さを測る代表的な指標)の15倍に相当し、割高でも割安でもない。2万円を回復すれば実に15年ぶりで、14年末からの騰落率は約15%となる。
金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト
研究領域:医療・介護・ヘルスケア
研究・専門分野
株式市場・株式投資・マクロ経済・資産形成
【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
2023年より現職
【加入団体等】
・日本ファイナンス学会理事
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト