鉱工業生産14年11月~在庫調整が足踏み

2014年12月26日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・在庫指数が3ヵ月ぶりの上昇
・3四半期ぶりの増産だが、力強い回復は期待できず

■要旨

経済産業省が12月26日に公表した鉱工業指数によると、14年11月の鉱工業生産指数は前月比▲0.6%と3ヵ月ぶりに低下した。先月時点の予測指数の伸び(前月比2.3%)、事前の市場予想(QUICK集計:前月比0.8%、当社予想は同0.9%)をともに大きく下回る結果となった。出荷指数は前月比▲1.4%と生産以上に落ち込んだ。この結果、在庫指数が前月比1.0%と3ヵ月ぶりに上昇し、在庫調整が足踏みする形となった。

製造工業生産予測指数は、14年12月が前月比3.2%、15年1月が同5.7%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(11月)、予測修正率(12月)はそれぞれ▲2.8%、▲0.1%となり、生産計画が下方修正される傾向が続いている。
予測指数を業種別に見ると、はん用・生産用・業務用機械(12月:前月比6.6%、1月:同13.7%)、情報通信機械(12月:前月比11.8%、1月:同10.0%)が牽引役となっているが、両業種ともにこのところ実現率のマイナス幅が大きくなっているため、実績値は大きく下振れる可能性が高い。
一方、生産調整を続けてきた輸送機械が11月に前月比0.5%と小幅な増加となった後、12月(前月比0.3%)、1月(同8.9%)も増産計画となっていることは明るい材料だ。輸送機械は生産計画と実績の乖離が比較的小さい業種であること、水準は依然として高いものの在庫調整が徐々に進捗していることから、持ち直しの動きが続くことが見込まれる。
14年11月の生産指数を12月の予測指数で先延ばしすると、14年10-12月期は前期比2.4%となる。生産計画が大幅に下方修正される傾向があることを考慮すれば実際には2%弱の伸びにとどまる可能性が高いが、3四半期ぶりの増産は確実となった。ただし、依然として在庫調整圧力の強い状態が続いているため、力強い回復は当面期待できないだろう。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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