家計調査14年10月~個人消費は底這い圏の動きが続く

2014年11月28日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・実質消費支出は減少幅が縮小
・個人消費は底這い圏の動き

■要旨

総務省が11月28日に公表した家計調査によると、14年10月の実質消費支出は前年比▲4.0%となった。減少幅は9月の同▲5.6%から縮小し、前月比では0.9%と2ヵ月連続で増加した。10月は週末に2つの台風が上陸したことで外出が控えられたため、百貨店売上高は低調だったが、消費全体への影響は比較的小さかったとみられる。
消費支出全体の減少幅は前月から大きく縮小したが、保健医療が9月の前年比▲9.1%から一転して大幅増に転じた影響が大きく、家具・家事用品(9月:前年比▲11.9%→10月:同▲14.4%)、被服及び履物(9月:前年比▲2.7%→10月:同▲6.9%)など10項目中5項目は減少幅が拡大しており、個人消費が全体として回復に向かっているとはいえない内容となっている。
実質消費水準指数(除く住居等、季節調整値)は前月比▲0.1%(9月:同0.2%)と3ヵ月ぶりの低下となり、駆け込み需要が本格化する前の水準を依然として大きく下回っている。ただし、10月の指数水準は7-9月期を0.9%上回っている。7-9月期のGDP統計の個人消費は前期比0.4%の低い伸びにとどまったが、10-12月期は伸びを高めることが予想される。
なお、家計調査の消費支出はサンプル要因から弱めの動きとなっており、このことがGDP統計の個人消費の弱さにつながっているとの指摘がある。確かに家計調査(勤労者世帯)の実収入(名目)は14年3月から9月まで前年比でマイナスを続け(10月は前年比1.2%)、一人当たり賃金が前年比でプラスを続ける毎月勤労統計とは異なる動きとなっていた。
サンプルの問題で前年に比べ収入の低い世帯が多く、このことが家計調査の消費支出の下振れにつながっている可能性は否定できない。ただし、このことは同時に2013年の消費支出が実態よりも強めに出ていた可能性を示唆するものであることも合わせて考える必要がある。

10月の家計調査はヘッドライン(実質消費支出)の数字こそ前月よりも改善したが、実質消費水準指数、商業販売統計などの動きと合わせて考えると、個人消費は依然として底這い圏を脱していないと判断される。先行きについては、企業業績の改善を背景に冬のボーナスも増加することが見込まれるものの、所定内給与が前年比0%台前半の伸びにとどまっていること、景気減速に伴い所定外給与の伸びが鈍化傾向にあることから、名目賃金の伸びが加速することは期待できない。一方、原油価格下落に伴う消費者物価上昇率の鈍化が実質所得の押し上げ要因として働く。このため、個人消費は持ち直しの動きを続けることが見込まれるが、そのペースは当面緩やかなものにとどまる可能性が高い。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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