加藤 えり子()
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【要旨】
運用総資産額が10兆円を越える海外の大型年金基金には、不動産投資を行っている基金も多く、投資する不動産のリスクレベルや地域・国ごとの分散を図っているケースもある。上位20位の中にはCalPERS(California Public Employees’ Retirement System)など米国の公務員年金が5基金含まれ、これらの基金の不動産投資の歴史は長い。今回は、主に不動産市場の様々な局面を経験している米CalPERSと近年大型年金の中で特に不動産投資額を増加させているCanada Pension Plan(カナダ国民年金基金)、Government Pension Fund Global(ノルウェー政府年金基金1)、National Pension Service(韓国国民年金基金)に着目した。
実際の年金基金による地域配分では、証券に投資する場合と同様に自国や近隣地域へのバイアスが生じることもある。米CalPERSでは不動産資産の80%以上がカナダを含む北アメリカに所在し、カナダCPPでも米国とカナダを合わせて50%を超える配分となっている。韓国の不動産市場規模は、市場規模では世界シェア2%に過ぎないが、韓国NPSの自国不動産への投資は不動産資産の33%を占めている。一方、ノルウェーGPFGは、自国不動産への投資は行っていない。これはノルウェーGPFGがグローバル投資を志向しており、ノルウェーの不動産市場規模が小さいことによると思われる。
2013年以降、世界の主要な不動産市場で安定した賃料収入をもたらす立地に優れた不動産への投資が増加、価格の上昇とともに利回りは低下してきている。金融緩和により国債などの利回りが低下する環境下で相対的に利回りが見込める不動産に資金が流入していること、同様に各国の上場リート(不動産投資信託)市場にも資金が流入し、リートによる物件取得が活発化したこと、金融危機を経て賃料収入を重視する投資家が増え、そのような不動産への投資需要の高まったこと等が背景にある。複数の市場で資産価格上昇が懸念される局面となった2014年において、各年金投資家がどのような地域、用途・戦略を対象として不動産投資に取り組むのか注目される。
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