雇用関連統計14年8月~雇用情勢は改善傾向が続くが、企業の求人意欲に陰りも

2014年09月30日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・失業率は前月から0.3ポイント低下の3.5%
・企業の求人意欲に陰りも

■要旨

総務省が9月30日に公表した労働力調査によると、14年8月の完全失業率は前月から0.3ポイント低下の3.5%となった。労働力人口が前月から9万人の減少となる中、就業者数が前月から9万人増加したため、失業者数が前月に比べ18万人の減少となった。労働市場から退出した人が増えたことが失業者減少の一因となっている。また、労働需給をより敏感に反映する雇用者数は前月よりも7万人の減少となった。失業率は大幅に低下したが、内容はヘッドラインの数字ほど良くはない。

厚生労働省が9月30日に公表した一般職業紹介状況によると、14年8月の有効求人倍率は前月から横這いの1.10倍(QUICK集計・事前予想:1.10倍、当社予想も1.10倍)となった。有効求職者数が前月比0.2%と7ヵ月ぶりの増加となる一方、有効求人数が前月比▲0.2%(7月:同▲0.5%)と小幅ながら2ヵ月連続で減少した。有効求人倍率は14年6月まで19ヵ月連続で改善してきたが、7月、8月と横這いにとどまり改善が一服する形となった。有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.04ポイント低下の1.62倍となった。依然として高水準にあるものの、新規求人数が前月比▲0.7%(7月:同▲1.5%)と2ヵ月連続で減少するなど、消費増税後の景気減速を受けて企業の求人意欲がやや弱まっていることがうかがえる。
新規求人数を産業別に見ると、消費増税前には前年比30%台の高い伸びとなっていた製造業の伸びが急速に低下し、8月には前年比1.6%となったほか、建設業(前年比▲5.1%)、サービス業(前年比▲7.1%)は前年比でマイナスとなった。
消費税率引き上げ後の景気は個人消費、生産関連を中心に弱めの動きが目立っているが、雇用情勢の改善傾向は維持されている。
ただし、雇用関連指標はあくまでも景気の遅行指標であることは念頭に置いておく必要がある。前回の消費税率引き上げ時は97年5月をピークに景気は後退局面入りしたが、失業率、有効求人倍率が悪化し始めたのは97年秋から98年初め頃にかけてであった。
14年末にかけては消費増税後の景気減速の影響が労働市場に明確に現れる可能性があるだろう。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)