ドル円相場、再始動の秋~マーケット・カルテ9月号

2014年08月19日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

ドル円相場は7月末にやや円安方向に振れたが、8月には再び102円台での膠着した推移が継続している。目先は材料難もあって、相場観が大きく変わるとは考えにくい。夏の間は動意薄だろう。

しかし、秋には、円安ドル高が再始動すると見ている。先行きの円安材料は多い。まず、米国の景気回復や量的緩和終了に伴う米金利上昇を受けたドル高が期待できる。他にも早ければ9月と目されるGPIFのポートフォリオ変更発表や年末にかけてのNISAの枠消化に伴う国内投資家による外貨建資産等への投資活発化も円安材料にカウントできる。さらに、秋の物価上昇率が再加速しなければ(筆者はしないと予想)、日銀の追加緩和観測に伴う円安圧力が発生する可能性もある。米金利上昇に伴う米株の調整などリスクオフの要素もあるため、不安定感は否めないものの、トレンドとしては円安ドル高と見ている。

一方、ユーロ円相場は横ばい圏の動きを予想。最近もユーロ経済の低迷を示す指標が相次いでいるうえ、ロシアとの相互制裁による悪影響も懸念され、ユーロへの悲観が台頭しやすい地合いが続くだろう。円とユーロは弱さ比べとなり、方向感の定まらない展開が続きそうだ。

長期金利は最近さらに低下し、0.5%前後の推移になっている。ただし、採算的にこの低水準に追随できる投資家は少ないため、低下余地は小さい。むしろ、3ヵ月後は米金利上昇などを材料として、やや持ち直していると予想する。
 
(執筆時点:2014/8/19)

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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