生活保護受給世帯増加の主因は?-貧困の連鎖を断ち切るためにも「就労支援」への取組強化を-

2014年08月14日

(井上 智紀)

■要旨

7月半ばに公表された「平成25年 国民生活基礎調査の概況」によれば、我が国の相対的貧困率は、全体の16.1%に対し、ひとり親と子世帯では54.6%と、依然として高い水準となっている。このような経済的困窮に対するセーフティネットである生活保護制度の適用状況についてみると、生活保護の受給世帯数は20年以上も増加を続けており、最新の結果では160.2万世帯にのぼっている。世帯類型別の内訳をみると「高齢者世帯」が概ね4~5割で最も多く、実数、構成比とも伸び続けているのに対し、「障害・傷病者世帯」、「母子世帯」はそれぞれ実数としては伸びているものの、全体に占める構成比では概ね一貫して低下傾向を示している。このように、高齢化の進展を背景として伸び続ける「高齢者世帯」は、受給世帯数増加の主因であるように考えられがちである。しかし、実際には、占率の高い「高齢者世帯」の影で「その他世帯」の増加が15年以上続いており、その増加率は「高齢者世帯」や生活保護受給世帯全体の伸び率を上回っている。

母子世帯とその他世帯の保護開始の理由をみると、両世帯とも「離死別」や「失業・倒産」、「その他収入の減少」といった経済的な要因が約半数を占めて多くなっていることから、雇用や所得の減少などの経済的な要因が、近年では母子世帯のみならず様々な世帯にとって大きな問題となっている可能性を示していると考えられる。

生活保護制度は、国民のセーフティネットとして重要な役割を担っているものの、これ以上の生活保護受給世帯の増加は、出来る限り抑制されることが望ましい。貧困の連鎖を断ち切るとともに、受給世帯数の増加を抑制していくためには、母子世帯やその他世帯といった就労可能な世帯を対象とした就労支援の仕組みのより一層の強化が、急務といえるのではないだろうか。

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