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高齢者のQOL(生活の質)
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世代間“相互”扶助の重要性-「高齢者の活躍」が若年世代支える「生涯現役社会」
2014年08月04日
(土堤内 昭雄)
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最近、高齢の母親が入院し、病棟で過ごす機会が増えた。そして、病院では実に多くの職種の人が働いていることに改めて驚いた。医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、管理栄養士、介護福祉士、作業療法士、臨床心理士など多種多様だ。そこで私が気づいたことは、その多くが若い世代の人たちということだ。一方、入院患者の多くは高齢者だ。まさに今日の高齢社会は、若い世代による「世代間扶助」によって支えられていることを強く実感したのである。
日本の公的年金制度も「賦課方式」と呼ばれる世代間扶助の考えに基づいている。年金支給の財源にその時々の保険料収入を充てるという、現役世代から年金受給世代への仕送り方式なのだ。「賦課方式」は、将来自分が年金を受給する財源を現役時代に積み立てておく「積立方式」に対して、インフレなどの経済状況の変化に対応できるという利点がある。一方、この方式の課題は、少子高齢化により人口構造が逆ピラミッド型になると、現役世代の負担が著しく大きくなることだ。
若年世代の負担を少しでも軽減するためには、高齢世代の世代内扶助を進めることや元気高齢者を中心に多くの高齢者がより長く働き続けることが大切だ。高齢者の雇用期間を長くすると、若年雇用を奪うことになると懸念する声も聞かれるが、今後日本は本格的な人口減少時代を迎え、労働力人口も大幅に減るのだ。将来の若年層の失業率の推移には、雇用の需給ミスマッチが大きく影響しており、その解消のためには各世代が各々の特性を活かした働き方、職種、業種を選択することが重要だろう。
たとえば経済的・時間的自由度が高い高齢者の場合、休日や早朝の短時間勤務が適している人も多い。また、高齢者は地域で過ごす時間も長く、若年世代の子育てを地域で応援することもできる。若年層と高齢層が競合する働き方をするのではなく、相互補完的な働き方を模索し、高齢世代がすべて社会的扶養の対象になるのではなく、社会の支え手として活躍することが必要だ。
これからの人口構造の変化を考えると、高齢世代が若年世代から一方的に支援される片務的世代間扶助では社会の持続可能性を維持することは難しい。若年世代が安定して働ける雇用環境や安心して子育てできる育児環境を整備することに高齢世代が積極的に協力し、世代間の"相互"扶助を進めることが重要だ。長寿化により元気な高齢者の増加が見込まれる今日、高齢者の活躍が若年世代支える「生涯現役社会」の実現が求められる。少子高齢・人口減少社会の「成長戦略」には、「女性の活躍」と共に「高齢者の活躍」が欠かせないのではないだろうか。
(参考)
研究員の眼『長寿時代へのパラダイムシフト~生涯現役社会を目指して』(2014年7月22日)
基礎研 Report Head Line
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