消費者物価(全国14年5月)~消費増税分の価格転嫁後は値上げの動きが一服

2014年06月27日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・消費税の影響を除くと上昇率はほぼ変わらず
・コアCPI上昇率は夏場以降鈍化へ


■要旨

総務省が6月27日に公表した消費者物価指数によると、14年5月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比3.4%(4月:同3.2%)となり、上昇率は前月から0.2ポイント拡大した。
4月時点では経過措置で旧税率が適用されていた電気代、都市ガスなどが5月から新税率が適用されたことにより、上昇率が高まった。経過措置対象品目の上昇率拡大によってコアCPIは0.2ポイント程度押し上げられた。一方、教養娯楽(4月:前年比4.5%→5月:同4.0%)は上昇率が若干縮小した。
消費税率引き上げによるコアCPI上昇率の押し上げ幅(前年比)を4月が1.7%ポイント、5月が2.0%ポイントとすると、消費税の影響を除くコアCPIは3月が前年比1.3%、4月が同1.5%、5月が同1.4%となる。
また、5月のコアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.67%(4月:同0.62%)、食料(生鮮食品を除く)が0.28%(4月:同0.28%)、その他が0.45%(4月:同0.60%)、消費税率引き上げが2.0%(4月:同1.7%)であった(エネルギー、食料、その他は当研究所が試算した消費税の影響を除くベース)。

14年6月の東京都区部のコアCPIは前年比2.8%(5月:同2.8%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。東京都区部のコアCPIを消費税の影響を除くベースでみると、3月が前年比1.0%、4月が同1.0%、5月が同0.9%、6月が同0.9%となる。
コアCPIの上昇率は4、5月で2%ポイント程度拡大したが、ほとんど全てが消費税率引き上げの影響によるもので、基調としては伸び率が頭打ちとなっている。消費税率引き上げ時にはそれに上乗せする形で価格改定をする動きも見られたが、値上げの動きはその後一服している。
夏場以降は円安効果の一巡に加え、景気減速に伴う需給バランス悪化の影響から、伸び率が徐々に鈍化し、年末にかけては2%台後半(消費税の影響を除くと0%台後半)の伸びになると予想する。ただし、イラク情勢の緊迫化からここにきて原油価格が大幅に上昇しており、ガソリン店頭価格も9週連続で上昇している。原油価格の動向次第ではエネルギー価格を中心にコアCPIの上昇率が高止まり、あるいは再拡大する可能性もあるだろう。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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