コラム

年金の未来も女性がカギ!?~2014年 公的年金財政検証結果を読み解く

2014年06月04日

(中嶋 邦夫) 公的年金

6月3日に公的年金の財政見通し(財政検証)が発表されました。今回の試算では、「前提が甘い」というこれまでの批判を受けて、8通りのシナリオ(経済前提)で計算されました。8通りもあると複雑ですが、「女性」に注目すると上手く整理できそうです。

現在の年金制度は、少子高齢化に合わせて支払う年金額を調整(削減)することで、財政のバランスを保つ仕組みになっています。そのため、「将来の年金がどこまで減るのか」を見ることになります。特に、将来のモデル世帯の年金水準が、法律で決められた下限(現役世代の平均手取り収入の半分[50%])を超えているかどうかが、ポイントとなります。

今回の結果は、計算の前提に女性の労働参加を見込むかどうかで、結果が大きく分かれました。女性の労働参加が進むシナリオでは、将来の給付水準が法律で決められた下限を上回る結果になりましたが、労働参加が進まないシナリオでは、法定の下限を下回る結果となりました。また、女性の労働参加が進むシナリオでも、将来の出生率が全国最下位の東京並みに低下すれば、給付水準が下限を下回る結果となりました。

女性の労働参加と少子化脱却という2つの課題の同時達成、すなわち、男女が協力して子どもを育てながら仕事を続けられる社会の実現が、年金、ひいては日本の未来にとって重要と言えそうです。




 


 
 (お詫び)初出時に、図表1の青字部分を「+2%前後」、その下の赤字部分を「-15~3%」としていましたが、正しくは「+1%程度」と「-15~4%」でした。お詫びして訂正致します。(2014/06/20)

保険研究部   上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任

中嶋 邦夫(なかしま くにお)

研究領域:年金

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度全般、家計貯蓄行動

経歴

【職歴】
 1995年 日本生命保険相互会社入社
 2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
 2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)

【社外委員等】
 ・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
 ・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
 ・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
 ・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
 ・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)

【加入団体等】
 ・生活経済学会、日本財政学会、ほか
 ・博士(経済学)

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