ユーロ圏の財政健全化-政府債務残高GDP比率の安定化に必要な成長の加速-

2014年05月23日

(伊藤 さゆり) 欧州経済

  1. 2013年のユーロ圏の財政赤字の名目GDP比は財政の健全性の目安となる3%まで縮小した。EU・IMF支援に支援要請国は、卒業した3カ国も含めてまだ赤字は過剰である。非支援要請国は多くが過剰な赤字を脱したが、フランスとスロベニアが残った。
  2. EUの財政健全性のもう1つの目安である政府債務残高の名目GDP比率(債務残高比率)は世界金融危機前から恒常的に60%の基準値を上回ってきたが、金融危機後の急上昇の後も上昇が続き、13年には92.6%に達した。
  3. 債務残高比率に影響を及ぼす要因のうち利払い費はユーロ圏全体では3%前後で安定している。欧州委員会は、13年にほぼ均衡した基礎的財政収支が14年以降は黒字転化、成長の加速で15年には債務残高比率が低下に向かうと予測している。
  4. ユーロ圏の過剰債務国に対する評価は改善しているが、これらの国々の債務残高比率の安定を実現する鍵は持続的な成長の実現にある。

経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり(いとう さゆり)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴

・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職

・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
           「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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