金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト
井出 真吾(いで しんご)
研究領域:医療・介護・ヘルスケア
研究・専門分野
株式市場・株式投資・マクロ経済・資産形成
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配当を増やす企業が増加傾向
株式投資では3種類の収益が期待できる。(1)株価の値上がり益、(2)配当からの収益、(3)株主優待品だ。とりわけ3月は上場企業の約7割が本決算を迎えるため、「配当・優待を獲得するための買い」が盛んになることも珍しくない。
実際にデータを見てみよう。図1は東証1部に上場する3月本決算の大企業(時価総額上位500社)について、期初予想から上方修正した企業と下方修正した企業の割合を示したものだ。企業業績との関連を見るため法人企業統計の営業増益率(対前年)も示した。
図1から企業業績が改善すると配当を増やす企業の割合が増える様子がみられる。2014/3期は営業利益が4割以上増えており(4月~12月の前年同期比)、このペースが維持されれば配当額を上方修正する企業の割合は2013/3期よりも更に増えるかもしれない。
一方、下方修正も増加傾向にある点は注意が必要だ。金融危機以降、下方修正する企業の割合は徐々に増加し、2013/3期は約1割に達した。民間企業全体では業績が改善基調にあっても、企業間での業績二極化などを反映して下方修正する企業が増えていると解釈される。個別企業の株式に投資する際は業績チェックが欠かせない。
高配当企業に投資するファンドも
個別企業の業績を見極める自信がなくても、配当の魅力度が高い企業に投資するファンドを活用する手がある。図2は近年、急速に注目度が高まっている"スマートベータ"と呼ばれる指数とTOPIXの過去20年間の平均収益率である。各指数の詳細は割愛するが1、いずれもTOPIXの収益率を上回った。
ここで、各指数の収益率を「株価の値上がり益」と「配当からの収益」に分けてみる。注目すべきは、「配当からの収益」だけでなく「株価の値上がり益」も高配当利回り指数が最も高い点だろう。
この指数は構成銘柄を選ぶ際に企業の収益性や財務体質も考慮する。更に、配当性向が極端に高い"背伸び配当銘柄"を除外するので、結果的に優良企業を多く含むと考えられる。
しかも配当利回りが高いということは、1株あたりの予想配当額が同じ他社と比べて株価が過小評価された"真の割安株"の可能性がある。そのため株価が修正される過程で値上がり益も高くなったと考えられる。
無論スマートベータがTOPIXの収益率を下回る時期もある。「何でもいいから手っ取り早く儲けたい」という向きには適さないが、NISA口座を活用するなど長期投資で大儲けを狙わない投資家には有力なツールとなるだろう。
アベノミクスで日本経済は再び成長軌道に乗ることが期待されている。とはいえ、2013年のような株価の大幅上昇が続くとは考えにくい。一方、インフレで現金の実質価値が目減りするなら、それを補う程度の資産運用は他人事ではなくなる。こうした中、配当に着目した株式投資は派手さこそないが、「おカネに働いてもらう地道な手段」として検討に値しよう。
金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト
研究領域:医療・介護・ヘルスケア
研究・専門分野
株式市場・株式投資・マクロ経済・資産形成
【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
2023年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト