【タイGDP】政局混乱で低迷、長期化の恐れも

2014年02月18日

(高山 武士) 欧州経済

1.一段と減速

タイの国家経済社会開発委員会事務局(NESDB)は2月17日に2013年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表した。実質GDP成長率は前年同期比(原系列)で+0.6%となり、前期(同:+2.7%)から減速した。前期比(季節調整値)も+0.6%と、前期(同+1.4%)から減速している。その結果、2013年通年の成長率は前年比+2.9%となり、洪水被害からの復興で高めの伸び率を記録した前年(同+6.5%)と比べ、大きく悪化した。




2.政治リスクは顕在化、今後の不透明感も拭えず

10-12月期の成長率は前年同期比で+0.6%とマイナスには至らなかったものの、非常に弱い数値だったと言える。実際、2013年の成長率は前年比+2.9%となり、NESDBによる昨年11月時点での予測(同+3.0%)を下回った。また、NESDBは2014年の成長率見通しを前年比+3.0-4.0%とし11月時点(同+4.0-5.0%)から大幅に下方修正している。

タイでは昨年10月末に、反タクシン派によるデモが勃発、現在まで続いている。年明けの1-2月は春節の時期であり、例年、中国からの観光客が増える傾向にあるが、今年は同時期に総選挙や大規模なデモが重なったため、さらに影響が大きくなることが懸念される。政府は比較的底堅い観光需要を見込むが、下振れリスクは大きいと見られる。

また、インフラ開発や農家の消費を支えていたコメ担保融資制度などは、政策自体が反タクシン派の批判対象となっているだけに、政局が混乱している限りは、政府による成長の押し上げにはそれほど期待できず、先行きに対する不透明感にもなっている。

現インラック政権と反タクシン派の対立は、双方の歩みよりが見られず、持久戦の様相を呈していることから、政治の不透明感は長期化すると見られる。そのため、少なくとも今年前半は経済への悪影響が生じるだろう。

海外経済の改善が見られるため、これは輸出主導国であるタイには恩恵になると考えられるが、生産指数などを見ても回復が見られず、現在のところ恩恵は少ない。デモにより消費者や企業景況感も低下していることから、しばらくはタイ経済にとって厳しい状況が続くと見られる。

経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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