経済研究部 主任研究員
高山 武士(たかやま たけし)
研究領域:経済
研究・専門分野
欧州経済、世界経済
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1.現状:伸び率は6%台に減速、通年では7%超を達成
フィリピンの国家統計調整委員会(NSCB)は1月30日、2013年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表した。実質GDP成長率は前年同期比(原系列)で6.5%の増加となり、前期(同+6.9%)より減速した。一方、前期比(季節調整済)では+1.5%(前期:同+1.3%)と加速、2013年通年の成長率は前年比+7.2%(前期:同+6.8%)と7%を超える高成長を記録した。
10-12月期の海外からの純所得は、前年同期比+15.1%(前期:同+14.4%)と2桁増を維持しており、国民総所得(GNI)も前年同期比+7.8%(前期:同+8.1%)と8%近い伸び率を維持した。
2.今後:意外に先行きには障害も多い
2013年10-12月期の成長率は6.5%と6%台に減速、また、GDP公表に先立って7-9月期の成長率も7.0%から6.9%へ改定された。やや景気減速感もあるが、10-12月期は台風被害の影響が生じており、これが成長の下押し圧力として働いていたことを勘案すると底堅い成長を維持したと評価できる。市場予測の中央値(10-12月期の前年同期比で+6.0%、Bloomberg集計)も上回った。
ただし、今後については消費、投資、輸出のそれぞれに良い材料と悪い材料が混在している。
良い材料としては、台風被害支援やクリスマス前ということもあって海外出稼ぎ労働者からの送金が好調であること、投資認可額が盛り返していること、日本向けの輸出が好調に推移していることが挙げられる。
一方、懸念材料としては、足もとでインフレ率が上昇していること、建設投資が急速に鈍化していることが挙げられる。日本向け輸出でも、消費増税後の鈍化懸念が残っている。
低所得者層が多いフィリピンでは、飲食料品の値上りが購買力の低下と消費減速に直結しやすいため、注意が必要だろう。建設投資については、不動産融資基準を厳格化した金融機関も多く、当局も不動産バブルを警戒していることを踏まえると、今後の伸び悩みが懸念される。
こうした状況を踏まえると、今後は底堅く推移するものの、先々には成長を阻害となる障害も多く、これまでのような7%超の成長は難しくなっていると言える。
経済研究部 主任研究員
研究領域:経済
研究・専門分野
欧州経済、世界経済
【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員