ドル高のち一旦円高か~マーケット・カルテ2月号

2014年01月20日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

12月半ばに米国で量的緩和縮小が決定され、これを前向きに捉える市場の動きによってドル円相場ではドルが上昇したが、その後1月上旬に発表された米雇用統計の弱い結果などを受けてややドル安が進み、足元では104円付近となっている。

今後は堅調な米景気を背景とした緩やかな米緩和縮小が日米金利差を拡大させ、中長期的なドル上昇を促すだろう。ただし、今回予想期間の3ヶ月という時間軸で考えると、4月の消費増税が大きなポイントになる。増税後に国内景気下振れへの警戒が強まることでデフレ脱却期待が後退し、一旦は株安を通じたリスク回避の円買い戻しが予想される。米緩和縮小が新興国経済に与えるマイナスの影響がこの時期に顕在化する可能性もある。現水準から見ると、3ヶ月後のドル円レートは横ばい程度と予想する。

ユーロの対ドルレートは最近弱含みで推移。今後もECBによる追加緩和観測などから弱含みそう。対円でもユーロが多少下落すると見ている。ただし、ECBの追加緩和策には手詰まり感が出ており、ユーロ高是正効果には不透明感があるため、ユーロの大幅下落はなさそうだ。

本邦長期金利は安定した推移を見せている。今後は米金利上昇という金利上昇圧力が予想されるが、日銀の国債買い入れがその波及を抑制する。また、日銀の追加緩和への期待も金利押し下げに作用するとみられ、しばらく本邦長期金利に上昇トレンドは出にくい。
 
(執筆時点:2014/1/20)

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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