金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト
井出 真吾(いで しんご)
研究領域:医療・介護・ヘルスケア
研究・専門分野
株式市場・株式投資・マクロ経済・資産形成
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■要約
昨年は順調に上昇した日経平均株価だが、今年に入り2日連続で下落した。今後の急落を想定すべきか。その必要はなく、むしろ2014年末に向けて緩やかに上昇すると考える。
■株価の適正ゾーンという考え方
年明け以降の日経平均は、1月6日に382円(2.3%)安、7日も95円(0.6%)安と2日連続で下落した。調べてみると、年初から2日連続で日経平均が下落したのは2008年以来6年ぶりのことだ。2008年といえば"リーマンショック"が起きた年である。もう少しさかのぼると1990年も同様で、このときは1989年の年末に日経平均が史上最高値をつけたものの、年明けから一転して下落し、その後"バブル崩壊"となった1。
こうした経験を踏まえると今年も株価急落に備えておくべきなのだろうか。結論から言えば筆者はその必要はないと考えている。図の雲のような部分は「企業業績からみた日経平均の適正ゾーン2」を示している。昨年6月以降、実際の株価(図の赤い折れ線)は7月に一時的に適正ゾーンを上回ったものの、ほぼ一貫して適正ゾーンの中で推移した。
ここ2日間で500円弱という大幅な下落もこの図を使うと理解しやすい。つまり、昨年12月後半は日経平均が大きく上昇し、適正ゾーンの上限を超えていた。株価の過熱感が年明けに調整された格好だ。仮に年明け以降も上昇を続けていればバブルに突入していたかもしれず、むしろ健全な下落と受け止めればよいだろう。
■今後は適正ゾーンが上方シフトで株価も上昇
では、今後の株価をどうみるか。適正ゾーンは企業の業績によって上下にシフトする。現在は2013年度の業績予想をベースとしているが、1年後の時点では2014年度業績予想がベースとなる。市場では2014年度は1割程度の増益を見込む声が多いので、それに見合う分だけ適正ゾーン自体が上にシフトすると考えるのが自然だろう。その場合の適正ゾーンは15,400円~17,600円となる。
あとは適正ゾーンのうち上中下どのあたりを想定するか。これには市場の心理状態が楽観的か悲観的かを読むことが求められるが、2014年度の企業業績が予想どおり1割ほど改善するのであれば、少なくともアベノミクスや消費税増税が失敗だったという事態には陥っていないだろう。このシナリオに沿えば2014年末時点の株価は適正ゾーンの上限に近い水準(17,500円程度)が想定される。
むろん企業業績だけで株価が決まるわけではなく、市場心理が楽観や悲観に大きく傾けば適性ゾーンを飛び出すこともある(実際に過去にもあった)。また、現在の16,000円程度から17,500円に向けて一本調子で上がるとは考えていない。15,000円~18,000円くらいの範囲で上げ下げを繰り返しながら1年を通してみれば緩やかに上昇するというのが素直な予想だろう。
これは現時点で筆者が考えるメインシナリオだ。国内外の政治経済など状況変化に応じて今後シナリオの修正が必要になるかもしれない。しかし、このように自分なりの「軸」となる考え方を持っていれば、投資に不慣れな人でも株価の短期的な上げ下げに翻弄されたり一喜一憂することなく、腰を据えて株式市場と向き合えるだろう。
金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト
研究領域:医療・介護・ヘルスケア
研究・専門分野
株式市場・株式投資・マクロ経済・資産形成
【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
2023年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト