11月マネー統計~貸出金利(一年以上)が過去最低を記録

2013年12月10日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■見出し

・貸出動向: 伸び率は09年6月以来の高水準
・マネタリーベース: 年末見通し200兆円まであと少し
・マネーストック: マネーの伸びは過去最大を更新

■introduction

貸出・預金動向によると、11月の銀行貸出の伸び率は前年比2.4%となった。春以降、貸出の伸び率に頭打ち感が出ていたが、再び加速の動きを見せており、前向きに評価が出来る。一方、貸出金利は低下基調を継続。10月の新規貸出金利のうち、長期ははじめて0.9%割れを記録した。銀行間の競争が激しいうえ、日銀による大量国債買い入れによって、長めの国債利回りが強力に押さえ込まれているためとみられる。異次元緩和の効果とも言えるが、銀行の利ざやはさらに圧迫されている。貸出増加圧力が今後高まる可能性がある。

11月末のマネタリーベース残高(平残)は189.7兆円と9ヵ月連続で過去最高を更新。末残ベースでは191.6兆円となっている。13年末残高見通しは200兆円であるため、残り1ヵ月で8.4兆円の積み上げが必要となる。今月は資金吸収要因である国債等の発行超が小さい見込みであり、見通しの大幅未達という事態は回避できそうだ。

マネーストック統計によると、11月のM2平均残高の伸び率は前年比4.3%、M3は同3.4%、リスク性資産を含む広義流動性は4.2%と、それぞれ過去最高を更新した。日銀の異次元緩和を発端として、市中のマネー量もじわりと増加している。安全資産である預金への資金流入は継続し、マネーの流れに大転換が起きているわけではないが、一部リスク性資産を積み増す動きも続いている。

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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