10月マネー統計 ~貸出残高は09年3月以来の高水準

2013年11月12日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■見出し

・貸出動向:貸出残高は09年3月以来の高水準
・主要銀行貸出動向アンケート調査:企業の資金需要は一進一退
・マネタリーベース:過去最高を更新したが、やや減速
・マネーストック:マネーの伸びは過去最大に

■introduction

貸出・預金動向によると、10月の銀行貸出の伸び率は前年比2.3%となった。残高はリーマン・ショックを受けて手元流動性確保の動きが強まった09年3月以来の高水準を回復。ただし、ここ数ヵ月、伸び率には頭打ち感が出ている。日銀が狙う「ポートフォリオ・リバランス効果」が十分に顕在化しているとはまだ言いがたい。伸び率が再び拡大へ向かうためには、企業の設備投資マインドの本格回復が必要と考えられる。

主要銀行貸出動向アンケート調査によれば、2013年7-9月期の(銀行から見た)資金需要増減を示す企業向け資金需要判断D.I.は前回(13年4-6月期)比で6ポイント上昇の4と、2四半期ぶりにプラス圏("増加"とする回答が優勢)へ浮上した。D.I.は今回改善したとはいえ、前々回(13-1-3月期)の水準には届かず、一進一退の動きになっている。

10月末のマネタリーベース残高は186.9兆円と8ヵ月連続で過去最高を更新したが、前年比伸び率は9ヵ月ぶりに縮小した。前月比増加額は平残ベース(季節調整済み)で2.3兆円、末残ベース(季節調整前)では4.3兆円とともに目標達成ペースに届かなかった。

マネーストック統計によると、10月のM2平均残高の伸び率は前年比4.1%、M3は同3.3%、リスク性資産を含む広義流動性の伸び率も4.1%と、それぞれ過去最高を更新。未だ安全資産である預金への資金流入は衰えを見せておらず、株式市場でも個人投資家の売りが優勢であるなど、リスク資産投資が全体的に盛り上がっているわけではないが、限定的に投資機会をうかがう動きが見られる。

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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