消費者物価(全国13年8月)~物価上昇の裾野が徐々に広がる

2013年09月27日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・コアCPIは3ヵ月連続のプラス
・物価上昇品目数が4ヵ月連続で増加
・コアCPI上昇率は年末にかけて1%程度まで拡大へ


■introduction

総務省が9月27日に公表した消費者物価指数によると、13年8月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.8%(7月:同0.7%)と3ヵ月連続のプラスとなり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。コアCPI上昇率のうち、エネルギーによる寄与が0.81%(7月は0.76%)、食料品(生鮮食品を除く)が0.00%(7月は▲0.07%)、その他が▲0.01%(7月は0.01%)であった。
消費者物価指数の調査対象524品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、8月の上昇品目数は220品目(7月201品目)、下落品目数は240品目(7月は257品目)となり、上昇品目数が4ヵ月連続で増加した。
上昇品目数の割合は42.0%(7月は38.4%)、下落品目数の割合は45.8%(7月は49.0%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は▲3.8%(7月は▲10.7%)であった。直近4ヵ月で物価上昇品目数が59品目増加する一方、下落品目数が48品目減少したため、両者の差はここにきて急速に縮小している。
8月に下落から上昇に転じた主な品目は、小麦粉、冷凍調理ピラフ、冷凍調理ハンバーグ、調理カレー、野菜ジュース、すし(弁当)など調理食品も含めた食料が多いが、それ以外にも浴用剤、乾電池、フィットネスクラブ使用料などが上昇に転じた。
8月の上昇率は0.1ポイント拡大したにすぎないが、物価上昇の裾野が徐々に広がっていることを示したものと言えるだろう。
13年9月の東京都区部のコアCPIは前年比0.2%(8月:同0.4%)となり、上昇率は前月から0.2ポイント縮小した。電気代の上昇幅が大きく縮小(8月:前年比13.9%→9月:同5.6%)し、エネルギー価格の上昇率が8月の前年比10.8%から同6.3%へと大きく縮小したことがその主因である。
9月の東京都区部の結果からすれば、全国のコアCPI上昇率も9月以降はいったんプラス幅が縮小する可能性が高い。ただし、エネルギー価格の上昇率は引き続き高止まりすること、食料品を中心に原材料価格の上昇を価格転嫁する動きが続くこと、13年度中は消費税率引き上げ前の駆け込み需要もあり需給バランスのさらなる改善が見込まれることなどから、コアCPIの上昇率は年末にかけて1%程度まで高まることが予想される。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)