雇用関連統計13年7月 ~製造業の雇用者数が増加に転じる

2013年08月30日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・製造業の雇用者数が増加に転じる
・需要不足失業はほぼ解消

■要旨

総務省が8月30日に公表した労働力調査によると、13年7月の完全失業率は前月から0.1ポイント低下し3.8%となった。労働力人口が前月から▲4万人の減少となる中、就業者数が1万人の増加となったため、失業者数は前月に比べ▲3万人の減少となった。
就業者数の増加ペースは緩やかなものにとどまっているが、これは家族従業者、自営業主の大幅減少が続いているという構造的な要因による影響も大きい。労働需給をより敏感に反映する雇用者は4月が前月比24万人増、5月が同3万人増、6月が同7万人増、7月が9万人増と順調に増加を続けており、昨年末からの景気回復が雇用に波及していることを裏づけるものと言ってよいだろう。
雇用者数の内訳を産業別に見ると、製造業が前年比6万人増(6月:同▲11万人減)と1年11ヵ月ぶりの増加となった。昨年末頃からの鉱工業生産の回復がようやく製造業の雇用増につながり始めたと考えられる。
厚生労働省が8月30日に公表した一般職業紹介状況によると、13年7月の有効求人倍率は前月から0.02ポイント上昇の0.94倍となった。失業者の減少を反映し有効求職者数が前月比▲1.4%の減少となる一方、有効求人数が前月比0.2%と10ヵ月連続で増加した。有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.03ポイント低下の1.46倍となったが、引き続き高水準となっている。
新規求人数を産業別に見ると、ほとんどの業種が前年比二桁の高い伸びとなったが、特に6月に13ヵ月ぶりに増加に転じた製造業の伸びが大きく加速した点が目立っている(6月:前年比0.8%→7月:同12.6%)。
雇用情勢が全体として改善の動きを続ける中、製造業の不振が目立つ形となっていたが、6月に新規求人数が増加に転じた後、7月は雇用者数も増加に転じた。景気回復が製造業の雇用にも波及し始めたと考えることができるだろう。
なお、UV曲線を基に当研究所が推計した足もとの構造的失業率は3.7%程度とみられ、足もとの失業率とほぼ同水準となっている。このことは需要不足による失業がほぼ解消され、これ以上失業率が下がれば労働需給逼迫に伴う賃金上昇が起こりやすくなることを意味する。本格的な賃金上昇が実現するかどうかを占う上では、失業率が今後構造的失業率以上に下がるか(需要不足失業率はマイナスとなる)が注目される。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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