【タイGDP】成長鈍化が鮮明、先行きにも懸念

2013年08月20日

(高山 武士) 欧州経済

1.成長鈍化が鮮明に

タイの国家経済社会開発委員会事務局(NESDB)は8月19日に2013年4-6月期の国内総生産(GDP)を公表した。実質GDP成長率は前年同期比(原系列)で+2.8%となり、洪水からの復旧で高めの成長率を記録した前期(前年同期比:+5.4%)から失速した。また、前期比(季節調整値)では0.3%の減少(前期:同▲1.7%)となり、成長減速が鮮明になっている。


2.先行きの懸念材料は多い

タイでは先行きに対する懸念もさらに高まっている。

内需に関しては、昨年終了した自動車購入支援策の反動減が顕在化しはじめ、今後も、昨年に販売台数が大きく押し上げられているため、前年同期対比で大幅なマイナスが続くと見られる。外需に関しては、バーツ高こそ修正されたが、肝心の需要の改善が見られず、伸び悩みが続いている。

政府は8月に税制優遇などの景気刺激策を公表したが、財政支出の大幅な拡大を伴うものではなく、成長率の押し上げ効果は限定的と見られる。加えて、政府では、インラック政権下で再開されたコメ担保融資制度について、財政赤字拡大とコメの輸出量減少など課題が浮上している。現政権にとって農村部は大きな支持基盤であるため、制度改革は支持率の低下につながることが想定され、その舵取りが難しくなっていると言えるだろう。

経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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