鉱工業生産13年5月 ~市場予想を上回る高い伸びも、生産計画はやや慎重

2013年06月28日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・生産の伸びは市場予想を大きく上回る
・生産計画はやや慎重

■要旨

経済産業省が6月28日に公表した鉱工業指数によると、13年5月の鉱工業生産指数は前月比2.0%と4ヵ月連続の上昇となり、事前の市場予想(QUICK集計:前月比0.2%、当社予想は同1.2%)を大きく上回った。出荷指数は前月比0.8%と3ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比▲0.3%と2ヵ月ぶりの低下となった。
5月の生産を業種別に見ると、生産の牽引役となりつつあった輸送機械は前月比▲3.4%と落ち込んだが、設備投資の低迷を反映し弱めの動きが続いていたはん用・生産用・業務用機械が前月比7.6%の高い伸びとなるなど、速報段階で公表される15業種中、12業種が前月比で上昇(3業種が低下)した。
製造工業生産予測指数は、13年6月が前月比▲2.4%、7月が同3.3%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(5月)、予測修正率(6月)はそれぞれ▲1.4%、▲0.9%といずれもマイナスとなった。
予測指数を業種別に見ると、6月はほとんどの業種が前月比でマイナスとなっているが、特に輸送機械の減産幅(前月比▲6.8%)が大きい。一方、7月は輸送機械(前月比6.3%)、はん用・生産用・業務用機械(前月比9.3%)が高い伸びとなり、全体を大きく押し上げる形となっている。
生産の牽引役となりつつあった輸送機械が、5月の前月比▲3.4%に続き6月も大幅な減産計画となっていることは不安材料と言える。ただし、在庫の水準がそれほど高くないこと、7月は再び増産が見込まれていることからすれば、このまま輸送機械が生産調整局面入りするリスクは低いだろう。
13年5月の生産指数を6月の予測指数で先延ばしすると、13年4-6月期は前期比1.8%の上昇となり、1-3月期の同0.6%から伸びを高めることはほぼ確実となった。先行きについては、円安による輸出の押し上げ効果がさらに高まることが期待される一方、中国をはじめとした新興国経済の景気減速が輸出の下押し要因になる恐れがある。昨年末以降の生産の回復は個人消費を中心とした国内需要に支えられた部分が大きかったが、今後は輸出の動向が生産を大きく左右する展開となりそうだ。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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