経済研究部 経済調査部長
斎藤 太郎(さいとう たろう)
研究領域:経済
研究・専門分野
日本経済、雇用
関連カテゴリ
■見出し
・改善する雇用情勢
・3%台の失業率が視野に入る
■要旨
総務省が5月31日に公表した労働力調査によると、13年4月の完全失業率は前月から横ばいの4.1%となった。
労働力人口が前月から6万人の増加となる中、就業者数が4万人の増加にとどまったため、失業者数は前月に比べ4万人の増加となった。ただし、労働需給をより敏感に反映する雇用者数は前月から24万人の増加となり、13年1月からの4ヵ月では59万人増となった。また、失業者の内訳を求職理由別(季節調整値)に見ると、自発的な離職による者(自己都合)が前月に比べ3万人増の103万人となる一方、雇用契約の満了や勤め先や事業の都合といった非自発的な離職による者が前月に比べ5万人減の89万人となり、失業者全体に占める非自発的な離職による者の割合は32.8%とリーマン・ショック以降では最も低い水準まで低下した。雇用情勢は改善の動きが明確となりつつある。
厚生労働省が5月31日に公表した一般職業紹介状況によると、13年4月の有効求人倍率は前月から0.03ポイント上昇の0.89倍となった(QUICK集計・事前予想:0.87倍、当社予想は0.88倍)。有効求人数が前月比0.8%と7ヵ月連続の増加となる一方、有効求職者数が前月比▲1.6%と大きく減少したことが求人倍率を押し上げた。
有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は前月から0.01ポイント上昇の1.40倍となった。新規求人数は前月比▲0.1%と小幅な減少となったが、新規求職申込件数が前月比▲1.4%とそれを大きく上回る減少となったことが、求人倍率の改善に寄与した。
新規求人数を産業別に見ると、卸売・小売業(前年比12.7%)、建設業(前年比17.1%)が大幅な増加となる一方、製造業は前年比▲2.0%と11ヵ月連続で減少した。ただし、製造業の減少幅は2月の前年比▲8.9%、3月の同▲4.3%からは縮小しており、下げ止まりの兆しが見られる。
景気の回復基調が明確となってきたことを反映し、雇用情勢は改善しており、不振が目立っていた製造業でも雇用の先行指標である新規求人数に下げ止まりの兆しが見られる。景気は先行きも堅調に推移することが見込まれるため、失業率は近いうちに2008年10月(3.8%)以来の3%台となる可能性が高くなってきた。
経済研究部 経済調査部長
研究領域:経済
研究・専門分野
日本経済、雇用
・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員