【ブラジルGDP】高インフレ退治という難問に直面

2013年05月30日

(高山 武士) 欧州経済

1.ゆっくりとした回復

ブラジルの地理統計院(IBGE)は5月29日、2013年1-3月期の国内総生産(GDP)を公表した。1-3月期の実質GDP成長率は前年同期比(原系列)で1.9%の増加となり、前期の+1.4%を上回った。成長率は2012年4-6月期をボトムにゆっくりと回復に向かっていると言える。また、前期比(季節調整済)で見た伸び率は+0.6%で前期(同+0.6%)と同水準であった。


2.スタグフレーションリスク

ブラジルの成長率は改善しているが、回復力は乏しい。そして、この先も順調な成長回復に対する障害は多いと思われる。

目下、成長率が伸び悩んでいる最大の要因は輸出の低迷であるが、今後は高インフレという難問に取り組むことが必要になってくる。足もとでは食料品価格が前年同期比で2桁の伸び率を記録するなど、物価高が家計購買力の低下要因になっている。そのため、中央銀行は4月以降には利上げに転じている。金融引き締めは、インフレに対しては抑制的に働くものの、企業の投資を低迷させる要因になるほか、レアル高の要因にもなり輸出の回復を削ぐ可能性もあることから、いずれにしても経済成長にはネガティブな材料と言える。

利上げの実施に加えて、農作物の供給力回復が物価の安定に寄与すれば、被害を軽微なものにとどめられるだろう。ただし、仮にインフレの上昇に歯止めがかからないようであれば、成長回復にブレーキがかかり、スタグフレーション(高インフレと景気低迷の並存)に見舞われる恐れもある。それだけに、中央銀行や政府が今後、どのようなインフレ抑制策を行うのか、そしてその効果が注目される。

経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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