ドル高の気圧配置 ~マーケット・カルテ6月号

2013年05月20日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

5月前半の市場では、雇用統計など予想を上回る米経済指標やG7が無難に終わったことを受けて円安が再び進行、1ドル100円の節目を越えて下げ幅を広げている。利下げなどを受けてユーロドルも下落しており、ドル独歩高の色彩が強い。長期金利は異次元緩和で長期国債の流動性が低下していた中での株高・米金利上昇を受けて大幅に水準を切り上げており、不安定な展開が継続している。

米経済は今後とも比較的堅調な推移を辿るとみられ、FRBによる量的緩和の縮小・停止観測が高まりやすい地合いが続くだろう。従って、今後3ヵ月を見通した場合、日米金融政策の方向感の違いが意識されることで、円安ドル高トレンドが続く可能性が高い。円高材料は乏しいが、今後もG8など国際会議が続くため、直前にはドルの上値が重くなりそう。ユーロについては、景気低迷や追加利下げ観測などにより上値が抑えられるものの、債務危機の沈静化や輸入減少に伴う経常黒字拡大などが下支えとなる。従って、今後3ヵ月では、対ドルでは横ばいながら、対円ではややユーロ高が進む可能性が高い。

長期金利は今しばらく異次元緩和のインパクトを消化しきれず、不安定な展開が予想される。ただし、現在の水準は異次元緩和前をかなり上回っていることから、日銀は沈静化策の試行錯誤を続けている。3ヵ月後の長期金利は、この対応が奏功する形で、いったん現状比でやや低い水準に押さえ込まれていると予想する。

(執筆時点:2013/5/20)

経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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