【インドネシアGDP】かろうじて6%、先行きの懸念は残る

2013年05月07日

(高山 武士) 欧州経済

1.6%成長を維持

インドネシア中央統計庁(BPS)は5月6日、2013年1-3月期の国内総生産(GDP)を公表した。実質GDP成長率は前年同期比(原系列)で6.0%の増加となり、前期の2012年10-12月期(同+6.1%)よりやや減速したものの、6%成長を維持している。


2.貿易赤字とルピア安の懸念は残る

6%成長は、決して低い数値ではなく、堅調な状況が続いていると考えられるのだが、数年にわたり6%を超える成長を達成するなかで、今回の成長率はかろうじて6%を超える水準であり、また時系列で見るとじわじわと鈍化しているために、先行きに対する不安感を膨らませる結果だったと言える。

先行きの懸念材料としては、輸出の低迷によるものが最も大きいだろう。輸出の伸び率は輸入の伸び率を下回っている状況は変わらず、貿易赤字基調が続いていると言える。それがルピア安を招き、輸入の伸び悩みも目立ちはじめた。特に、原材料や資本財の輸入が鈍化しており、内需が弱含んでいる可能性も考えられる。また、ルピア安は輸入インフレ圧力を高める要因にもなる。物価高は直接に個人消費の抑制材料となるほか、中央銀行が利上げを実施すれば、投資が減速する可能性も考えられる。現在のところ内需が底堅く、景況感も良いため、こうしたリスクが大きく成長率を低下させることは考えにくいが、このまま貿易赤字とルピア安が改善されなければ、成長率が鈍化していく可能性は十分に考えられる。

この懸念材料である貿易赤字は構造的な問題に起因する部分も大きい。そのため、政府が取り組む構造改革、特に燃料への補助金削減策は重要と考えられる。構造的な問題を解決し成長持続に向けた政策を実施できるか、政府の力量が問われている状況とも言えるだろう。

経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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