金融市場の動き(5月号)~円安の切れ目が株高の切れ目か?

2013年05月02日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

  1. (株価) 昨年11月以降の株価上昇は円安進行によって強力に裏付けられている。実際、11月から4月までの日経平均株価とドル円レートとの相関係数は0.97に達し、1円の円安ドル高が株価を229円押し上げるという関係が成り立つ。今後も中期的には日米金融政策の方向性の違いなどから円安ドル高方向に進むとみられるものの、最近は円安が一服、株式市場もエンジンを欠いたような雰囲気になっている。ただし、円安でなければ株価が上昇しないわけではない。為替レートをベースとしつつも、それ以外の要素によって、株価水準は上下にシフトしてきた。具体的には、円安由来ではない企業の本来の競争力や、内需の動向、さらに企業活動の活性化を促す政府の取組みなどだ。今後、政府の環境整備に加えて、付加価値の高い商品開発などの企業努力によって売上が伸びてくれば、好循環が生まれ、日本株の上昇余地も広がるだろう。
  2. (日米欧金融政策) 4月は米欧ともに金融政策を現状維持としたが、日銀が新たな金融緩和の枠組みである「量的・質的金融緩和」を導入。日銀の緩和スタンスが際立つことに。目先は追加緩和に含みを持たせるECBの動きに注目。
  3. (金融市場の動き) 4月の金融市場は、円安ドル高、ユーロドルは上昇、長期金利はやや上昇した。今後ドル円が再び100円を目指す動きとなるカギは米経済指標の好転。当面の長期金利は、落ち着きどころが見えてくることで若干低下すると予想。



経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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