金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト
井出 真吾(いで しんご)
研究領域:医療・介護・ヘルスケア
研究・専門分野
株式市場・株式投資・マクロ経済・資産形成
関連カテゴリ
東京証券取引所は、女性の活用に積極的で経営効率も高い"なでしこ銘柄"として17社を選定した(文末に17社の一覧を記載)。少子高齢化時代の貴重な労働力としてだけでなく、消費者のニーズを的確に把むなど女性への期待は大きい。加えてこれら企業の経営効率も高いとなれば、応援する意味も込めて"なでしこ銘柄"を買ってみようと思う株式投資家も少なからずいるだろう。
では、なでしこ銘柄に投資する場合、単純に17銘柄を均等に買えばよいのだろうか。それとも、投資の原則とされる「ハイリスク=ハイリターン(リスクが高いほど収益も大きい)」に従い、リスクが高い銘柄をたくさん買った方が儲かるだろうか。
実は、最近の研究でリスクが極端に高い銘柄はリターンが低いことが分かってきた。こうした現象が起きる理由は必ずしも明らかになっていないが、リスクが高い銘柄には投資家が値上がりを期待して過大評価するため、結果として高値掴みしてしまうといった説がある。この仮説が"なでしこ銘柄"にも当てはまるか過去3年のデータで見てみると、リスクが20%台までは概ね「ハイリスク=ハイリターン」の関係が成り立っているが、リスクが30%を超える銘柄はリターンが低かった。
この現象が投資成果にどのくらい影響するか試算するため、17銘柄全てに投資した場合と、リスクが30%超の5銘柄を除く12銘柄に投資した場合の資産価値の推移をシミュレーションした。結果は図表2のとおりで、高リスク銘柄を除外した場合のリターンは46.9%であり、17銘柄全てを買った場合の36.1%より10%以上高くなった。17銘柄全てに投資したケースでも日経平均の16.5%よりだいぶ高く、なでしこ銘柄に投資妙味があったことは事実だ。しかし、3年前に元本100万円で投資したと仮定すると、現在の資産価値で10万円以上の差が開いたことを意味する(最低売買金額の制約があるためシミュレーションと全く同じ結果になる訳ではない)。
もちろん分析期間を変えれば異なる結果になり得る。また、純粋に『なでしこ銘柄を応援したい!』という気持ちでこれら企業の株式を買うことは一切否定されるものではない。ただし、この行為は"投資"ではなく単なる"応援出資"と認識すべきだ。株式に"投資"するならば、ある程度の分析や見通しに基づくことは当然である。この点をきちんと区別しないと、もし期待どおりの収益を得られなかった場合に釈然としない気持ちになりかねない。即ち、自分の見通しが間違っていたのであれば納得もいくが、"投資のつもり"で闇雲に買った株が値下がりすれば後悔は大きい。
金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト
研究領域:医療・介護・ヘルスケア
研究・専門分野
株式市場・株式投資・マクロ経済・資産形成
【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
2023年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト