円安で貿易収支はどこまで改善するのか

2013年02月08日

(斎藤 太郎) 日本経済

  1. 貿易収支は東日本大震災以降、2年近くにわたって赤字が続いており、2012年10-12月期の貿易赤字は▲9.1兆円(季節調整済・年率換算値)となった。貿易赤字の長期化を受けて、このまま貿易赤字が定着するとの見方も増えている。
  2. このところ円安が急速に進んでおり、貿易収支の悪化に歯止めがかかることが期待される。ただし、為替レートの影響は輸出価格よりも輸入価格に強く出るため、短期的には貿易赤字はむしろ拡大し、円安の効果で貿易赤字が縮小に向かうのは2013年4-6月期以降となるだろう。
  3. ラグ付の輸出入関数を推定した上で、円安による貿易収支への影響を試算したところ、2012年10-12月期に比べて10%の円安が継続した場合、赤字幅は縮小に向かうものの2014年度末でも▲4兆円程度の赤字という結果となった。円安だけで貿易赤字を脱するためには20%程度の円安(円ドルレートで98円程度)が続くことが条件となる。
  4. 貿易収支の黒字転換のためには、円安による価格効果に加え、海外経済の回復に伴う所得効果の後押しによって輸出が高い伸びとなることが必要だが、海外経済の回復ペースは当面緩やかにとどまることが見込まれるため、そのハードルはかなり高い。



経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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