日銀決定会合(1/21-22日):2%のインフレ目標を導入、政府との共同声明を提出、無期限の資産買い入れ

2013年01月22日

(矢嶋 康次) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

■見出し

・2%のインフレ目標を導入、政府との共同声明を提出、無期限の資産買い入れ

■introduction

日銀は21~22日の金融政策決定会合で、物価安定目標を盛り込んだ共同声明「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について」を公表した。「中長期的な物価安定の目標」と「目途」を「目標」に変更、目指すべき物価上昇率を先進国並みの2%程度に引き上げ、達成時期は「できるだけ早期」とかなり短期のイメージを示した。また経済財政諮問会議で進捗状況を定期的に検証することなども盛り込んだ。
金融緩和策として2014年から資産買入基金で「期限を定めない資産買い入れ方式(無期限の資産買い入れ)」の導入も決めた(約9年半ぶりに2回連続の緩和)。期限を定めず毎月13兆円の資産買い入れを実施。買い入れ内訳は長期国債が2兆円、短期国債が10兆円。その他の資産は残高を維持するように買い入れる、基金の残高は14年中に10兆円程度増加し、それ以降も残高を維持する見込みだ。

今回掲げられた消費者物価指数2%は、消費税の増税や原油価格の高騰の時期を除くと1990年代初めから実に20年以上達成されていない。デフレがこれだけ長期化しており、その実現性に対する議論や、家電製品や自動車など国際競争にさらされている財の価格が下落している中でCPI2%上昇が実現されるとすればガス水道電気といった公共料金などサービス価格が大幅に上がってしまうとの懸念もでてきそうだ。持続的・安定的な2%上昇を維持するためには、やはり賃金上昇がなければならない。そのためには今回の共同声明にも盛り込まれた規制緩和などを大規模に実施し成長力を高めなければならないだろう。



今回の共同声明を読むといくつかのポイントを指摘できそうだ。

(1)物価安定の目標を「できるだけ早期」に実現とはどれくらいの期間をいうのか。

(2)物価安定の目標の実現を目指し、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買い入れ等の措置をそれぞれ「必要と判断される時点まで継続」とは、物価2%のどれくらい前に引き締めに転じるイメージなのか。

(3)おそらく日銀は3カ月ごとに展望レポートの公表、見直しに合わせて経済財政諮問会議への報告を行うと予想されるが、市場の金融緩和観測が3ヶ月タームという歪な予想が生じる。

(4)今後の金融緩和の強化はオープンエンドの強化=月々の買取金額を引き上げるという方向なのか(リスク性資産への広がりはないのか、外債のオプションはないのか、マイナス金利はないのか)。

ただ、上記の具体的な運営はポスト白川体制が舵取りを行うことになる。インフレ目標導入が実施されたことで、市場の次なる関心は日銀総裁・副総裁人事に移ることになる。

総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次(やじま やすひで)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

経歴

・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員

第54回 エコノミスト賞(毎日新聞社主催)受賞 『非伝統的金融政策の経済分析』

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