タイ7-9月期GDP:前年同期比+3.0%~内需は強いが、今後は伸び悩む見込み

2012年11月20日

(高山 武士) 欧州経済

■見出し

・内需は強い
・経済政策が奏功、ただし足もとでは減速ぎみ

■introduction

タイの国家経済社会開発委員会事務局(NESDB)は11月19日に2012年7-9月期の国内総生産(GDP)を公表した。実質GDP成長率は前年同期比(原系列)で+3.0%となり、4-6月期(同+4.4%)から低下した。また、前期比(季節調整値)で見ると1.2%の増加となり、こちらも4-6月期(同+2.8%)から減速している。
成長の内訳を需要項目別に見ると(図表1)、内需に関しては7-9月期の個人消費が前年同期比+6.5%、民間投資が同+16.2%、政府消費が同+9.0%、公共投資が同+13.2%であり、いずれも4-6月期の伸び率を上回っている(4-6月期はそれぞれ同+5.6%、+11.8%、+7.4%、+4.0%)。成長にマイナス寄与したのは在庫変動であり、寄与度で▲3.8%ポイントと、4-6月期の同+2.8%ポイントから見ると大幅に低下している。需要項目別に見れば、内需は総じて強かったと言えるだろう。
外需に関しては、7-9月期の輸出は前年同期比▲2.8%と4-6月期(同+1.1%)からマイナス成長に転じた。ただし、輸入についても7-9月期は前年同期比▲1.8%と4-6月期(同+8.6%)より急減速しマイナスに転じたため、純輸出の成長率への寄与度は4-6月期の▲4.2%ポイントから7-9月期の同▲1.1%ポイントに縮小した。
供給項目を見ると、7-9月期はGDPシェアで約4割に達する製造業が前年同期比▲1.1%とマイナス成長に転じたことが成長の抑制材料となっている(図表2)。またサービス業のうち、小売業も前年同期比+4.1%と4-6月期の同+5.4%から減速している。農業が前年同期比+8.6%(4-6月期は同+1.8%)、運輸・通信業が同+8.0%(4-6月期は同+7.5%)と好調さを保った産業もあったものの、輸出の鈍化を受けた製造業の低迷を補うには至らなかったと言える。

経済研究部   主任研究員

高山 武士(たかやま たけし)

研究領域:経済

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴

【職歴】
 2002年 東京工業大学入学(理学部)
 2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
 2009年 日本経済研究センターへ派遣
 2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
 2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
 2014年 同、米国経済担当
 2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
 2020年 ニッセイ基礎研究所
 2023年より現職

【加入団体等】
 ・日本証券アナリスト協会 検定会員

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)

関連カテゴリ・レポート