貿易統計12年9月~7-9月期の外需寄与度は前期比▲0.7%程度のマイナスに

2012年10月22日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・貿易赤字(季節調整値)が震災以降で最大に
・7-9月期は主要3地域向けの輸出が全て減少
・7-9月期の外需寄与度は前期比▲0.7%程度のマイナスに

■introduction

財務省が10月22日に公表した貿易統計によると、12年9月の貿易収支は▲5,586億円と3ヵ月連続の赤字となり、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:▲5,701億円、当社予想は▲6,592億円)通りの結果となった。輸出の減少幅が8月の前年比▲5.8%から同▲10.3%へと拡大する一方、輸入が前年比4.1%(8月:同▲5.4%)と2ヵ月ぶりに増加したため、貿易収支は前年に比べ大きく悪化した。
中国向け輸出は中国経済減速の影響からすでに弱い動きとなっていたが、9月はこれに対中関係悪化による影響が加わったことから、8月の前年比▲9.9%から同▲14.1%へと減少幅が拡大した。反日デモが激化したのは9月中旬以降であるため、10月は減少幅がさらに拡大する可能性があるだろう。
季節調整済の貿易収支は▲9,803億円と19ヵ月連続の赤字となり、8月の▲4,619億円から赤字幅が大きく拡大した。輸出が前月比0.9%と小幅な増加にとどまる一方、輸入が同10.0%と急増したことが貿易赤字の拡大に寄与した。貿易収支の赤字幅は東日本大震災直後である11年4月の▲6,906億円を大きく上回り最大となった。
7-9月期の輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)で見ると、米国向けが前期比▲6.9%(4-6月期:同0.0%)、EU向けが前期比▲5.6%(4-6月期:同▲6.1%)、アジア向けが前期比▲4.3%(4-6月期:同▲2.4%)、全体では前期比▲4.6%(4-6月期:同0.2%)となった。4-6月期は欧州、アジア向けが落ち込む中、米国向けは一定の底堅さを維持していたが、7-9月期は主要3地域向けの全てが前期比で大幅なマイナスとなった。
9月までの貿易統計と8月までの国際収支統計の結果を踏まえて、7-9月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出が前期比▲4%台の減少、輸入が前期比ほぼゼロ%の横ばいとなることが見込まれる。この結果、7-9月期の外需寄与度は前期比▲0.7%(4-6月期は同▲0.1%)となり、成長率を大きく押し下げることが予想される。
当研究所では鉱工業生産、家計調査、建築着工統計等の結果を受けて、10/31のweeklyエコノミストレターで7-9月期の実質GDP成長率の予測を公表する予定である。現時点では、外需が大幅なマイナスとなることに加え、民間消費、設備投資が前期比で減少に転じることにより内需による押し上げも期待できないことから、前期比年率▲2%を超えるマイナス成長を見込んでいる。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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