日銀短観(9月調査)~大企業製造業の景況感は2悪化の▲3、先行きも低迷

2012年10月01日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

  1. 大企業製造業の業況判断D.I.は▲3と前回から2ポイント低下し、事前に懸念されていた景況感の悪化が確認された。また、前回まで4調査連続で改善を示していた大企業非製造業のD.I.も横ばいとなり、改善が止まった。前回調査以降、欧州や中国経済の減速感がますます色濃くなり、米国経済も精細を欠くなど、海外経済は低迷。国内でも復興需要こそ続くものの、エコカー補助金は終盤で力を失うなど、事業環境が厳しさを増したためと考えられる。中小企業も大企業同様、製造業で悪化、非製造業で横ばいとなった。
  2. 先行きについても総じて低迷が示された。大企業製造業については横ばいでとどまったが、非製造業では悪化、環境変化に対する抵抗力の点などから先行きへの悲観が高まりやすい中小企業では、製造業・非製造業ともに今回も景況感悪化が示された。
  3. なお、政府が尖閣諸島を国有化した時点(9月11日)では大半の企業が調査票を提出済みであったと考えられるため、その後のデモ激化等に伴う影響はあまり織り込まれていないとみられ、現時点の景況感はさらに悪化している可能性が高い点には注意が必要だ。
  4. 注目の12年度事業計画について、収益はともに下方修正されたが増収増益シナリオはかろうじて維持された。また、設備投資計画は上方修正となりかなり強めの印象。ただし、ともに今後の下方修正懸念は全く払拭できず、今後の海外情勢が大きなカギとなる。



経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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