金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト
井出 真吾(いで しんご)
研究領域:医療・介護・ヘルスケア
研究・専門分野
株式市場・株式投資・マクロ経済・資産形成
金(GOLD)投資の人気が高まっている。マスコミや経済雑誌では金投資を取り上げる記事が多く、投資信託など金に投資する金融商品も相次いで開発されている。背景にあるのは、世界的な景気低迷の長期化で株式などリスク資産が敬遠されると同時に、各国の低金利政策により債券や通貨の投資魅力が乏しくなる中で、金は投機マネーの流入もあって順調に値上がりしていることであろう。
金は、それ自体が収益を生む資産ではないので、株式の配当や債券の利子のように投資家に収益が還元されることはない。また、企業が稼いだ利益を内部留保すれば企業価値が向上し、その結果として株価が値上がりすることもあるが、金ではそのようなことは起きない。一方で、金はデフォルト(倒産)の心配がないので、価値がゼロになることがないとも言われる。
では、金投資により得られる収益率はどのくらいなのだろうか。これにはいくつかの考え方がある。1つ目は「金にはリスクが無いので、無リスク金利(例えば短期金利)と同じだ」というもの、2つ目は「金にも価格変動リスクはあるので、無リスク金利+リスクプレミアム(リスクの対価)」という考え方、そして3つ目は「長期的に見てインフレ率と同じくらいになる」というものだ。最もポピュラーなのは「インフレ率説」だろうか。
ここで、金、原油、日経平均株価がそれぞれ最高値を記録した時点を基準にして、その10年前からの価格推移を比較すると、価格の上昇ペースがよく似ていることが分かる(月末ベース、図表1)。これらの価格は10年間で6倍~10倍に上がり、平均収益率はいずれも年率20%程度1 となっている(図表2)。この年率20%という収益率が無リスク金利やインフレ率よりも高いことは自明であろう。
金は産業用の需要が全体の10%程度に過ぎず、株式や原油と比べてビジネスサイクルとの関連性が低いと言われるが、いうまでもなく投資の基本は「安く買って高く売る」ことだ。今後さらに金が値上がりするかどうかはいずれ結果が出ることだが、投機マネーの流入もあってこれまで極めて順調に上昇してきた金価格の先行きに不安2を覚えるのは筆者だけだろうか3。
金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト
研究領域:医療・介護・ヘルスケア
研究・専門分野
株式市場・株式投資・マクロ経済・資産形成
【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
2023年より現職
【加入団体等】
・日本ファイナンス学会理事
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト