貿易統計12年8月~輸出の低迷が続く

2012年09月20日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・輸出入ともに減少
・7-9月期の外需寄与度はマイナス幅拡大へ

■introduction

財務省が9月20日に公表した貿易統計によると、12年8月の貿易収支は▲7,541億円と2ヵ月連続の赤字となったが、事前の市場予想(QUICK集計:▲8,200億円、当社予想は▲9,203億円)は上回った。輸出は前年比▲5.8%と3ヵ月連続で減少したが、7月の同▲8.1%からは減少幅が縮小し、輸入が前年比▲5.4%(7月:同2.1%)と2ヵ月ぶりの減少となったため、前年に比べた貿易収支は小幅ながら1年8ヵ月ぶりに改善した。
季節調整済の貿易収支は▲4,728億円と18ヵ月連続の赤字となり、7月の▲3,719億円から赤字幅が拡大した。輸出(前月比▲2.1%)、輸入(前月比▲0.2%)ともに前月比で減少したが、輸出の減少幅が輸入の減少幅を若干上回った。
8月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比12.3%(7月:同0.9%)、EU向けが前年比▲19.2%(7月:同▲23.5%)、アジア向けが前年比▲6.3%(7月:同▲9.6%)となった。季節調整値(当研究所による試算値)では、米国向けが前月比15.2%、EU向けが同3.6%、アジア向けが同3.0%、全体では同1.5%となった。8月の輸出はいずれの地域向けも持ち直したが、7月に大きく落ち込んだ反動によるところも大きく、7、8月の平均を4-6月期と比べると、米国向けが▲6.0%、EU向けが▲6.4%、アジア向けが▲4.6%、全体では▲4.5%となっている。基調としてはいずれの地域向けも低迷が続いていると判断される。
なお、中国向けの輸出(金額ベース)は前年比▲9.9%(7月:同▲11.9%)と大幅な減少となったが、9月は反日デモの拡大によって現地工場が一時的に閉鎖した影響が表れるため、減少幅はさらに拡大する可能性がある。 4-6月期のGDP統計では、輸出が前期比1.2%と増加したものの、輸入の伸び(同1.6%)を下回ったことから、外需寄与度が前期比▲0.1%と成長率を押し下げた。7-9月期は輸出が大きく落ち込むことにより外需寄与度のマイナス幅が拡大する可能性が高いだろう。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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