年金財政は本当に「黒字」?~「厚生年金・国民年金の平成23年度収支決算の概要」を読む~

2012年09月18日

(中嶋 邦夫) 公的年金

■見出し

1 ―― 「歳入」に「積立金より受入」を含んだ状態での「黒字」
2 ―― 運用収入はプラスだが「水物」。一方で運用収入以外の赤字が継続。
3 ―― 積立金の取崩しは想定済。だが、長期的な影響などの説明も必要ではないか。

■introduction

通常国会が終了し、世間の関心は各党の代表者選出に向けられている。各候補者が年金制度にどのようなビジョンを持っているかは分からないが、仮に総選挙となれば、各党のマニフェストには当然年金政策も掲げられることになるだろう。有権者としては、他の政策分野だけでなく、社会保障に関しても足下の状況について理解しておく必要があろう。
去る8月11日の新聞には、消費税率の引上げを含む社会保障・税一体改革の関連法案の成立を伝える記事の脇に、「厚生年金、国民年金ともに黒字」「株価上昇を受け、積立金の運用が好調」と書かれた小さめの記事が掲載されていた。これまで年金関係のニュースといえば、「財政逼迫」や「給付削減」といった活字に見慣れていたため、少なからず違和感を持った。一時期ほど話題に上がらない年金問題だが、実情はどうなっているのだろうか。

保険研究部   上席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査室長 兼任

中嶋 邦夫(なかしま くにお)

研究領域:年金

研究・専門分野
公的年金財政、年金制度全般、家計貯蓄行動

経歴

【職歴】
 1995年 日本生命保険相互会社入社
 2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
 2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)

【社外委員等】
 ・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
 ・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
 ・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
 ・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
 ・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)

【加入団体等】
 ・生活経済学会、日本財政学会、ほか
 ・博士(経済学)

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