雇用関連統計12年7月~雇用情勢は持ち直しているが、製造業の不振が目立つ

2012年08月31日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・失業率は前月から横ばいの4.3%
・労働需給の改善テンポは鈍化、特に製造業の不振が目立つ

■introduction

総務省が8月31日に公表した労働力調査によると、12年7月の完全失業率は前月から横ばいの4.3%となった(QUICK集計・事前予想:4.3%、当社予想も4.3%)。
労働力人口が前月から2万人減少する中、就業者数が3万人の減少となったため、失業者数は前月に比べ1万人の増加となった。就業者数は減少したものの、6月が27万人の大幅増となったことからすれば、減少は小幅にとどまった。雇用情勢は持ち直しの動きが続いていると判断される。
雇用者数の内訳を産業別に見ると、生産活動がこのところ低迷していることを反映し、製造業は前年比▲11万人減(6月:同▲15万人減)と11ヵ月連続の減少となったが、復興関連事業の本格化に伴う公共工事の急増を反映し、建設業が前年比1万人増(6月:同11万人増)と5ヵ月連続で増加したほか、宿泊・飲食(6万人増)、サービス(14万人増)といった内需関連産業が堅調であった。また、近年の雇用増の主役となっている医療・福祉は43万人増(6月:同27万人増)と増加幅が大きく拡大した。
厚生労働省が8月31日に公表した一般職業紹介状況によると、12年7月の有効求人倍率は前月から0.01ポイント上昇し0.83倍となった(QUICK集計・事前予想:0.83倍、当社予想も0.83倍)。有効求人数は前月比▲0.5%と1年4ヵ月ぶりに減少したが、有効求職者数が前月比▲0.9%とそれを若干上回る減少となったことが求人倍率の改善に寄与した。
有効求人倍率の先行指標である新規求人倍率は、新規求人数が前月比▲0.6%の減少となったことから、前月に比べ0.01ポイント低下の1.31倍と2ヵ月連続で低下した。
新規求人倍率は引き続き高水準にあり、有効求人倍率も改善を続けているが、新規求人数、有効求人数がともに減少するなど、改善テンポはやや鈍化している。
新規求人数を産業別に見ると、建設業、卸売・小売業、情報通信業などが前年比で二桁の伸びを続ける一方、6月に前年比▲1.1%と2年6ヵ月ぶりに減少に転じた製造業は7月には同▲3.9%と減少幅がさらに拡大した。生産活動の停滞を反映し、製造業の雇用は当面減少が続く可能性が高い。
雇用情勢は持ち直しの動きを続けているが、生産活動の低迷が長引けば製造業のさらなる雇用削減につながる恐れがあること、復興需要の一巡に伴い求人の増加が頭打ちになる可能性があることなど、先行きについては懸念材料が多い。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

レポートについてお問い合わせ
(取材・講演依頼)