以上の結果から日本では全体的にはガラスの天井が少しずつ改善されているが、産業によりそのばらつきが多いことや、ある職位までは昇進できてもそれ以上の職位までは昇進しにくい仕組みがまだ残存していることが伺える。
では他の国と比べた日本における女性管理職の割合はどのぐらいの水準であるのか。実際、管理職の定義や範囲は国ごとに異なっており、直接的な比較は難しいが、ILOのデータを参考とした総務省統計局の調査結果を参考にすると、日本における女性管理職の割合は10.2%で、アメリカ(42.7%)、ドイツ(37.8%)、イギリス(34.6%)と比べてはるかに低い水準であることが分かる
2。
また、世界経済フォーラムが、毎年各国における労働市場への参加や機会、教育、政治及び保健分野のデータから男女格差を測り、発表しているジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)の順位を見ると、2011年の日本の順位は135カ国中98位という低い順位であり、なおかつ前年の94位よりも順位が低下している
3。さらに、労働市場への参加や機会部門の順位はより低く、100位にランクされており、男女の間の格差が深刻な状態にあることが分かる。
日本における女性管理職の割合が低い理由はどこにあるのか。前述の「雇用均等基本調査」では、女性管理職が少ないあるいは全くいない企業に対してその理由をたずねているが、最も多い理由は「現時点では、必要な知識や経験、判断力等を有する女性がいない」であり、54.2%であった。以下、「将来管理職に就く可能性のある女性はいるが、現在、管理職に就くための在職年数等を満たしている者はいない」(22.2%)、「勤続年数が短く、管理職になるまでに退職する」(19.6%)の順であった。最近は日本でもワーク・ライフ・バランスに対する関心が高まり、関連制度を導入・整備する企業が以前より増加しているが、まだ結婚や出産、そして育児が原因で勤め先を辞めざるを得ない女性が多いことが女性の管理職登用を妨げている。
最近、ワーク・ライフ・バランスやダイバーシティ関連政策の展開により労働市場に再参加する女性が増加しているが、今後の少子高齢化や労働力減少に対応するためには、より女性の能力や才能を活用する必要があり、そのためには男性の家事や育児、そして介護への参加率を引き上げることが求められる。つまり、女性の労働市場への参加を支援するための政策のみならず、今まで女性が担当してきた家事や育児、そして介護を男女が平等に担当してこそ、ガラスの天井の問題は解決されていくのではないだろうか。p;
1 企業規模別には、課長相当職以上の女性管理職割合は、5,000 人以上規模で 2.9%、1,000~4,999 人規模で 2.7%、300~999 人規模で 3.4%、100~299 人規模で 6.5%、30~99 人規模で 12.1%、10~29 人規模で 16.9%となっており、規模が大きくなるほど、女性管理職割合が低い傾向がみられた。
2 資料出所:日本→総務省統計局「労働力調査」(2009年)、その他の国→ILO LABORSTA(2008年)
3 World Economic Forum(2011) The Global Gender Gap Report 2011 ジェンダー・ギャップ指数は、1 に近づくほど、男女平等であるといえる。2011年における日本の数値は0.6514で、1位のアイスランドの0.8530と大きな差を見せている。