経済研究部 経済調査部長
斎藤 太郎(さいとう たろう)
研究領域:経済
研究・専門分野
日本経済、雇用
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■見出し
・輸出の落ち込みが鮮明に
・輸出の下振れが景気腰折れにつながりやすい状況に
■introduction
財務省が8月22日に公表した貿易統計によると、12年7月の貿易収支は▲5,174億円と2ヵ月ぶりの赤字となり、事前の市場予想(QUICK集計:▲2,775億円、当社予想は▲2,198億円)を大きく下回った。輸出の減少幅が6月の前年比▲2.3%から同▲8.1%へと大きく拡大する一方、輸入が前年比2.1%(6月:同▲2.2%)と2ヵ月ぶりの増加となったため、前年に比べた貿易収支の悪化幅は前月から大きく拡大した。
季節調整済の貿易収支は▲3,257億円と17ヵ月連続の赤字となり、6月の▲3,176億円から赤字幅が拡大した。輸出(前月比▲1.1%)、輸入(前月比▲0.9%)ともに前月比で減少したが、輸出の減少幅が輸入の減少幅を若干上回った。
7月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比0.9%(6月:同10.8%)、EU向けが前年比▲23.6%(6月:同▲18.6%)、アジア向けが前年比▲9.8%(6月:同▲4.2%)となった。季節調整値(当研究所による試算値)では、米国向けが前月比▲9.3%、EU向けが同▲3.5%、アジア向けが同▲6.4%といずれの地域向けも急激に落ち込んだ。輸出数量全体では前月比▲3.2%であった。景気後退が続くEU向けの落ち込みが続いていることに加え、景気減速が鮮明となっているアジア向けも低調な動きとなっている。また、堅調な動きを続けてきた米国向けも2ヵ月連続で低下しており、輸出はここにきて牽引役を失いつつある。
6月、7月の輸出は、一定の底堅さを維持している米国などの海外経済の動きからすると弱すぎる結果であり、現時点では輸出の落ち込みがこのまま続くとは考えていない。ただし、政策効果の一巡に伴い国内需要の回復力が弱まりつつある中、輸出の下振れが景気の腰折れにつながりやすい状況となっている。輸出が8月以降持ち直しに向かうかどうかが注目される。
経済研究部 経済調査部長
研究領域:経済
研究・専門分野
日本経済、雇用
・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員