貿易統計12年6月~牽引役を失いつつある輸出

2012年07月25日

(斎藤 太郎) 日本経済

■見出し

・輸入が2年6ヵ月ぶりに減少
・牽引役を失いつつある輸出
・4-6月期の外需寄与度はほぼゼロに

■introduction

財務省が7月25日に公表した貿易統計によると、12年6月の貿易収支は617億円と4ヵ月ぶりの黒字となり、事前の市場予想(QUICK集計:▲1,375億円、当社予想は▲78億円)を上回った。輸出は前年比▲2.3%(5月:同10.0%)と4ヵ月ぶりに減少したが、輸入が原油価格の下落などに伴い前年比▲2.2%(5月:同9.3%)と2年6ヵ月ぶりに減少したことが貿易収支の改善に大きく寄与した。
貿易収支が原数値で黒字に転換したのは、6月は貿易収支が改善しやすいという季節性も影響している。6月の貿易収支を季節調整値で見ると、▲3,008億円と16ヵ月連続の赤字となった。輸入の減少幅(前月比▲6.5%)が輸出の減少幅(前月比▲1.4%)を上回ったため、5月の▲6,183億円からは縮小したものの基調としては依然赤字が続いている。
4-6月期の輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)で見ると、米国向けが前期比0.3%(1-3月期:同12.6%)、EU向けが前期比▲6.1%(1-3月期:同▲1.6%)、アジア向けが前期比▲3.0%(1-3月期:同4.4%)、全体では前期比0.8%(1-3月期:同▲0.5%)となった。景気後退が続くEU向けの落ち込み幅が拡大するとともに、欧州経済悪化の影響から景気減速が鮮明となっているアジア向けも2四半期ぶりの低下となった。米国向けは4四半期連続で上昇し、引き続き輸出全体を下支えしているものの、最近の米国経済減速を受けて伸び率は大きく低下した。輸出はここにきて牽引役を失いつつある。
6月までの貿易統計と5月までの国際収支統計の結果を踏まえて、4-6月期の実質GDPベースの財貨・サービスの輸出入を試算すると、輸出、輸入ともに前期比2%弱の伸びとなることが見込まれる。この結果、4-6月期の外需寄与度は前期比でほぼゼロ%(1-3月期は同0.1%)となることが予想される。
当研究所では鉱工業生産、家計調査、建築着工統計等の結果を受けて、7/31のweeklyエコノミストレターで4-6月期の実質GDP成長率の予測を公表する予定である。現時点では、外需が成長率に対してほぼニュートラルとなる中、個人消費、公的固定資本形成を中心に内需が高めの伸びとなることから、前期比年率2%台後半のプラス成長を見込んでいる。

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎(さいとう たろう)

研究領域:経済

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴

・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職

・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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