6月調査日銀短観~大企業・製造業の景況感は3改善の▲1、先行きはプラスへ

2012年07月02日

(上野 剛志) 金融市場・外国為替(通貨・相場)

  1. 大企業製造業の業況判断D.I.は▲1、前回比+3ポイントと景況感の改善が示された。前回以降、内需は復興需要の顕在化やエコカー補助金という政策効果が大きく寄与する形で堅調を維持。一方、海外では欧州債務危機が再燃し、米国、中国経済も減速傾向が強まるなど不透明感を増したが、輸出も含め好調な自動車からの波及効果が上回ったと考えられる。一方、中小企業は前回から悪化。価格交渉力ならびに経営環境悪化への対応力が大企業に比べ相対的に乏しいためと考えられる。非製造業は底堅い消費や復興需要を素直に反映して、大企業、中小企業ともに改善した。
  2. 先行きについても大企業製造業は引き続き改善見通しだが、復興需要の縮小、エコカー補助金の終了を控える非製造業では逆に小幅に悪化。中小企業についてはさらに慎重な見方が強く、製造業、非製造業ともに景況感の悪化が示された。
  3. 注目の12年度事業計画について、収益はともに上方修正され増収増益シナリオが維持された。また、設備投資計画も今回かなりの上方修正となった。例年6月調査では、計画が固まってくるに伴って上方修正される統計上のクセがあることや、比較対象となる11年度の値が今回下方修正された分、見た目の伸び率が押し上げられている面があることを考慮しても強めの印象。これまで長らく抑制されてきた反動や復興に伴う投資増が反映された可能性がある。



経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志(うえの つよし)

研究領域:金融・為替

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴

・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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